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高森明勅
2021.8.6 13:33皇統問題

皇位の安定継承の行く手に暗雲、急に新著を執筆することに

現代日本が直面している最優先の政治課題とは何か。
皇位の安定継承を目指す皇室典範の改正に他ならないだろう。
昨年、政府は「皇女」プランなる姑息な方策で誤魔化そうとした。
しかし、これを押し戻して、有識者会議を設置する線まで、
何とか事態を動かすことが出来た。

しかし、皇室典範特例法の附帯決議で求められた
「皇位の安定継承」への課題を検討するはずの有識者会議が、
自らに与えられた「宿題」を投げ出して、附帯決議とは無関係の
“目先だけ”の「皇族数の確保」へと、大幅に後退してしまった。
その様子を見ていて、改めてこの問題の基本を再確認し、
再整理する本を出す必要があるかも知れない、と考えるようになった。

広く世論に訴えると共に、最終決着を委ねられる国会議員や、
国会議員の認識にも影響を与えるメディア関係者にも、
しっかりメッセージを伝えたいと考えたからだ。

《原稿の締め切りまで2週間余り》

そこで、去る6月29日に旧知の編集者と会って話をした。
コンパクトでそれなりに訴求力を持つ新書で出すなら、
9月末頃か11月末頃に出すタイミングになるという。


「11月末では、もはや戦い済んで日が暮れて…になりかねない。
もし出すなら9月末しかない。
しかしその場合、原稿の締め切りがいつ頃になりますか?」

編集者
「8月は印刷会社の長い休みが入るので、
締め切りは繰り上げって…7月の頭(初旬)ですね。
原稿の分量は、コンパクトにまとめて貰って、
四百字詰め原稿用紙で大体250枚から300枚までの間」


「7月の頭? 今日は6月29日ですよね。
いくらコンパクトと言ってもしかるべき熟慮が必要なテーマなので、
1週間や10日くらいでその分量を仕上げるのは、さすがに無理でしょう」

こうして、締め切りはギリギリ遅く設定して貰って、
7月16日ということに決まった。
それでも執筆期間は2週間余りしかない。

《大学の前期試験と重なる》

しかもこの時期は、ちょうど大学での前期試験のタイミングに重なる。
私は例年、前期・後期共に試験はいわゆる試験期間中にはやらないで、
必ず最終授業日の1週間前に行っている。
何故なら、最終授業で学生達に試験問題の模範解答を詳しく示し、
採点結果を伝える必要があるからだ。

それをやらないと、せっかく試験を行った教育効果が、大きく削がれてしまう。
試験を行う最大の目的は、それまでに学んだ内容の中で
取り分け重要なポイントについて、正しく理解できているかどうかを、
学生が各自“自己チェック”することにあると考えている。
その為には、当然の前提として、試験問題は枝葉末節を問うのではなく、
重要なポイントをきちんと網羅した、直球勝負の内容にしなければならない。

その上で、「鉄は熱いうちに打て!」なので、
学生が試験問題に取り組んで悪戦苦闘した記憶が薄れない時点で、
模範解答を丁寧に説明する。採点結果も伝える。
そのことで、私が何を教えようとしていたか、
各自どこが理解できていなかったかを、切実に分からせることができる。
その為には、間に長い夏休みを挟んではいけない。

私は試験翌週の最終授業こそ、それまでの授業の文字通り集大成であり、
最も効果的な教育のチャンスだと考えている。
だから、最終授業日とか、全ての授業が終わった後の試験期間中に
試験をすることは、少なくとも私にとっては、貴重な教育機会を
みすみす手放す、余りにももったいないやり方のように思える。
執筆期間はもろにそれに重なる。

《手書き原稿は嫌われる》

その他、調整可能な日程は延期するするなり、
再設定するなりするしかないが、勿論どうしても動かせないものもある。
かなり窮屈な条件だ。
私は今も手書きなので(編集者からは“絶滅危惧種”と悪口を言われている)、
余計に時間がかかる。
しかし、やるしかない。
そう肚を決めて執筆に取り掛かった。

取り掛かってみると、思いの外、順調に進んで締め切り前日の
15日には270枚の原稿を書き上げた。
しかし手書きなので、キーパンチャーが打ち直す必要があり、
書き進めながら2章分ずつ3回に分けて編集者に渡す。
編集者からはボロクソに言われる。
「今やキーパンチャーという職業自体が絶滅危惧種です。
だから、その手配が大変なんです」と。
肩身が狭い。

それでも中身は「盛りだくさんで本格的な内容なのに読みやすく面白い
(これまでの本と違って!?)」と言ってくれた。
今はその校正作業中だ。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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