皇位の安定継承を目指す有識者会議。
第2回開催時(4月8日)には、ヒアリングに男系維持を
唱える論者が多く呼ばれた。その中で、旧宮家系の国民男性を“家族ぐるみ”で
皇室に迎え入れるという、ユニークな提案をした論者がいた。
これは少し驚いた。
皇室と国民の厳格な区別、皇室の尊厳、「聖域」性という視点が、
ほとんど抜け落ちているように感じる。「現在、宮家でもう途絶えたところもある。
そうしたところに、例えば、御家族に男系の男子のお子様がいらっしゃり、
そして皆様方のお眼鏡にかなう、国民も納得できるようなきちんとした
暮らしをしている御家族を選んで、その方たちが、絶えた宮家を
継ぐという形も一つの形であろう」「なぜ家族養子と言うかというと、お子様1人もしくは2人を
別のところにお連れして…というのは、とてもお気の毒というか、
人間の親、子どもの心情としてつらいものがある」
(櫻井よしこ氏)と。聴取事項の問9、つまり「(皇族でない)皇統に属する男系の男子」を
「①現行の皇室典範により皇族には認められていない養子縁組を
可能にする」もしくは「②現在の皇族と別に新たに皇族とする」
という方策について、どのように考えるか。この設問に対し、この論者は端から
「“旧宮家”の皇籍“復帰”について」と理解し(設問は“旧宮家”に
限定しておらず、又、対象となる世代はかつて一瞬たりとも
皇族であった事実はないので“復帰”という表現は正確ではない)、
①が「現実的」と答えておられた。その「現実的」な方策の中身が「家族養子」。
しかも「宮家でもう途絶えたところ」への「養子縁組」だと言う
(これは、前近代の宮家と近代以降の宮家の区別が、恐らく
理解できていないのだろう)。しかし、そもそも「もう途絶えた」宮家なら、
「親子関係のない者同士に、法律上の親子関係を成立させる」という、
通常の意味での“養子縁組”は成り立たないのではないか。
「お子様1人もしくは2人を…」と言うが、元々“旧宮家案”は、
未婚の“成人”男性を想定していたはずだ。
ところが、いつの間にか未成年者にまで対象者を広げるようになった。
恐らく、未婚の成人男性の中から、具体的な対象者を
見つけられなかったからだろう。
そうでなければ、資質も見極められず、本人に責任ある判断を
期待にしにくい未成年者(「お子様」)を、よりによって
皇籍取得という、この上なく重大な事柄の対象者にするという、
どう考えても無理がある、不自然な発想は出て来ないだろう
(それとも皇籍をよほど軽く見ているのか)。ところが、未成年者を対象にするというそれ自体が
無理筋のプランを“前提”に、「お気の毒」「親、子どもの
心情としてつらい」という理由から、いっそのこと「家族」全員で
皇族になって貰おうーというのは、本末転倒も甚だしい提案ではあるまいか。そんなに「お気の毒」なら、未成年の「お子様」を対象にするという
無理なプランを取り下げればよいだけの話。
しかし、あくまでも「お子様」プランにこだわった挙げ句、
「お気の毒」なので“家族ぐるみ”となって、家族ぐるみならば
現存の宮家への「養子縁組」は至難。
かと言って「②現在の皇族と別に新たに皇族とする」やり方では、
皇族として余りにも異質感が強過ぎて、その正当性(正統性)に
疑問符が付きかねない。なので、やむを得ず「もう途絶えた」宮家への
“家族ぐるみ”の「養子縁組」という、
奇想天外な提案に行き着いてしまったのだろう。しかも、「皆様方のお眼鏡にかなう」
「国民も納得できるような」との配慮は示されても、
「きちんとした暮らしをしている御家族ご自身が、家族ぐるみで
廃絶した宮家と養子縁組(??)することを“辞退される”可能性について、
全く触れておられない。とても「現実的」な方策とは思えない。
しかし、旧宮家案を「現実的」に追求すると、このような最も
“現実離れ”した結論に行き着く他ないのだろう。【高森明勅公式サイト】
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