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高森明勅
2021.2.18 06:00皇統問題

皇位継承の「期待値」計算

皇位継承の将来がどうなるか。
高森稽古照今塾の優秀な受講生の1人が、「期待値」を計算してくれた。

もし今の制度のまま、継承資格を「男系男子」に限定して、
皇室の次の世代が秋篠宮家の悠仁親王殿下お1方だけになった場合、
次のような結果が示された(いわゆる旧宮家案の困難さと、
政府が既にそれを選択肢から除外しているらしいことは、
前に指摘した通り)。

前提として、世代ごとに必ず結婚され、常に“お2方”の
お子様に恵まれるという、いささか「甘め」の条件を設けると、
継承可能性は以下の通り。

2代目→75%。3代目→56%。4代目→42%。5代目→32%。

常に“お1方”のお子様では、以下の通り。
2代目→50%。3代目→25%。4代目→13%。5代目→6%。
令和元年の合計特殊出生率は1.36人。
これをそのまま当て嵌(は)めると、後者のケースに近い。

一方、皇室において、上皇・上皇后両陛下以降の世代で実際、
平均して何人のお子様方に恵まれて来たかを見ると、1.2ないし
2人(分母の取り方で違って来る)。
最も“緩やかな”条件で、前者の計算結果に該当する。
それでも、早々と“危険水域”に突入することが分かる。
後者だと、もう2代目から不安になって来る。

これに対し、「男系男子」という“縛り”を見直した場合はどうか。
同じ悠仁殿下お1方だけからスタートして、後者の前提条件
(常にお1方のお子様に恵まれる)をそのまま適用しても、
継承の期待値は世代を超えてずっと100%。
当然と言えば当然ながら、将来像が全く異なる。
まさに「安定継承」が可能になるのだ。

だが、必ず結婚され、常にお1方のお子様に恵まれるとは、
勿論(もちろん)限らない。
そこで、お子様に恵まれる確率を4分の3、つまり75%とした場合、
お1方からスタートすると以下の通り。
2代目→75%。3代目→56%。4代目→42%。5代目→32%。
代を重ねるごとに、ハッキリと継承可能性が低くなっている。
皇位継承資格を「女性・女系」にまで拡大しても、
悠仁殿下お1方だけになってしまった“後”では、
危機を払拭し切れないことが分かる。
ところが、スタート時点でお2方(敬宮〔としのみや〕殿下+悠仁殿下)
だと以下の通り。

2代目→100%。3代目→100%。4代目→84%。
5代目→63%。安定性が格段に違って来る。

お3方だと、更に以下の通り2代目→100%。
3代目→100%。4代目→100%。5代目→95%。
明確に改善されている。

お4方では以下の通り。
2代目→100%。3代目→100%。4代目→100%。5代目→100%。
少なくとも5代目迄、計算上は、断絶の恐れが皆無という結果になる。
これは何を意味するか。「男系男子」限定を解除するにしても、
女性宮家の数を出来るだけ多く(現在、未婚の内親王方はお3方)
確保するのが望ましく、その為に、制度改正は(さほど遠くない将来に、
内親王方が次々と結婚されることが予想されるので)可及的速やかに
行わなければならない、ということだ。

常識的にも当たり前に属するだろうが、期待値計算によっても、
そのことを改めてしっかり確認できた、と言ってよいだろう。
このような計算を、自発的に行ってくれた受講生には、
感謝と敬意を表したい。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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