憲法上、天皇は特別な地位にある。
天皇という地位の特殊性を端的に示す1つが、天皇に民事・刑事の
裁判権が及ばないという事実だろう。
次のような指摘がある。
「まず、①刑事裁判については、皇室典範が摂政について在任中の
訴追を禁止する規定を置くことから(典21条。また国事行為の臨時代行に
関する法律6条参照)、天皇には刑事責任がないものと解されている。
次に、②民事裁判については、最高裁によれば、
『天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることにかんがみ、
天皇には民事裁判権が及ばないものと解するのが相当である』とされる」
(大石眞・大沢秀介編『判例憲法〔第2版〕』)。
これは、「象徴」に求められる“超越性”ゆえだろう。
帝国憲法では、天皇の法的無答責を明文で規定していた。
第3条に「天皇ハ神聖ニシテ侵(おか)スベカラズ」とあったのが、それだ
(同条は、一部で誤解されている神格化を意図したものではないので、念の為に)。
上記の事実から判断すれば、その趣旨は今の憲法下でも失われていない、と言えよう。
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