評論家の八幡和郎氏。
東大法学部を卒業され、通産省(当時)の官僚を経て、
現在は徳島文理大学の教授をされている。皇室関連の著書も多数あるようだ。
残念ながら、私はほとんど読んでいない。
今回、ある雑誌(『Hanada』2月号)に載った文章をチラリと覗(のぞ)いて、
驚いた。どうやら、皇室典範や皇室経済法などを読まないまま、皇室関連の制度論に
堂々と論及さているようだ。「いま、皇室典範では離婚がほとんど想定されて
いないが、眞子様の問題を離れても、皇族が離婚したらどうなるとか、
子供の扱いや経済的問題を決めておいた方がいいし、皇籍離脱をされた
皇族が離婚や死別されたときの扱いも、制度的に整備しておいた方がいい」
と書いてある。「ほとんど想定されていない」というのは曖昧な言い方だ。
しかし、ここで触れられた諸点については、皇室典範11~15条、
皇室経済法6条、「皇族の身分を離れた者及び皇族となった者の戸籍に
関する法律」などに、ちゃんと規定がある。普通なら、皇族方のご離婚を予(あらかじ)め想定するのは
非礼この上ない。
だが、法律に手抜かりがあってはならない。
だから、とっくに「制度的に整備」されている。
同氏が、せめて皇室典範だけでも斜め読みされていたら、
こんな文章は書けなかったはずだ。又、文中に「(1年間の支出は)独立家計を持たない皇族の女性が6百万円ほど」とある。
「独立家計を持たない皇族の女性」という大雑把な捉え方自体が、皇室経済法を見ていない
証拠。同じ、独立の生計(同経済法では「家計」でなく「生計」)を営まれない「皇族の女性」
でも、①親王妃、②王妃、③成年に達した内親王、④未成年の内親王、⑤成年に達した女王、
⑥未成年の女王では、それぞれ金額が違う。なので、とても一括して扱えない。
皇室経済法と同施行法の条文を突き合わせると、簡単な割り算さえ出来れば、
誰でも直ちに①~⑥それぞれの金額を導くことが可能だ。「6百万円ほど」という
表現は漠然としているが、⑤の金額に近い。
どこかで聞き齧(かじ)った数字だろうか。
私は、皇室典範や皇室経済法などを読んでいないことを、それだけで非難する
つもりはない(恐らく詳しく読んでいない人が殆〔ほとん〕どだろう)。そうではなく、それら基本的な法律にすら目を通さないで、こうしたテーマについて、
無責任に言及する態度に、首を傾(かし)げたくなるだけだ。
それにしても、こうした初歩的なミスがあれば、掲載誌そのものの信頼にも
関わるだろうに、担当編集者や校閲者は、チェックしなかったのだろうか。
いずれにせよ、いやしくも皇室に関するテーマを取り上げる以上、
より慎重かつ丁寧でありたいものだ。自戒したい。【高森明勅公式サイト】
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