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高森明勅
2020.11.4 06:00皇室

ふり仰ぐ、かの大空の…

昭和45年。
今から50年前の明治神宮ご鎮座50年に当たり、当時は皇太子妃で
いらっしゃった上皇后陛下がお詠(よ)みになった御歌(みうた)。

ふり仰ぐ
かの大空の
あさみどり(浅緑)
かかる心と
思(おぼ)し召しけむ

ふり仰ぐと、広々とした空はどこまでも爽やかな淡い青色。
その空のような澄みきった、広やかな心を持ちたいと、
明治天皇はお考えあそばされていたことよ(その尊いお心掛けを仰ぎ慕う)。

そんな意味の御歌だろう。
勿論(もちろん)、明治天皇の明治37年の次の御製(ぎょせい)
を踏まえておられる。

あさみどり
澄みわたりたる
大空の
廣(ひろ)きをおの(己)が
心ともがな

一点の雲も無く、淡い青色に澄み渡った大空が、清らかで、
しかも広々としているように、自分の心も是非ともそのようでありたい。

明治天皇は常にそのように願っておられた。

心の清らかさと、度量が大きいことは、しばしば矛盾しがちだろう。
清らかさに偏れば狭く(狭量)になり、心の広さ(広量)ばかりに
傾けば濁りも混じりかねない。

明治天皇は、それらのいずれかに偏るのではなく、
至難ながら両方を兼ね備えることを、心掛けておられた。
そのお気持ちを「大空」に託してお詠みになったのが、この御製だった。
スケールが大きく、調べ(言葉の調子)の高く雅(みやび)やかである
様(さま)は、まさに“天皇”たる方にしかお詠みになれない秀逸ぶり
だろう。

上皇后陛下は、数多い明治天皇の御製の中から、
「あさみどり」の御製をお踏まえになった御歌を、
“ご鎮座50年”という大切な節目の年に、明治神宮に納められた。

「ふり仰ぐ」の語には、明治天皇へのお気持ちも込められているだろう。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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