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笹幸恵
2020.8.11 18:57日々の出来事

庶民のぶどう狩り

団塊の世代であるうちの両親は、あまり世の中に惑わされない。
団塊世代が中心となった安保闘争の際も、
「お父さんは何してたの?」「どう思った?」と
以前聞いたことがあるが、
「もうフツーに働いていたよ」
「関わっていたのは大学生だけだろ」
と、じつにあっさりしたものだった。

私が小学生の頃、ファミコンが発売され、
瞬く間に人気が広がって親にねだったことがあったが、
「は? そんなもん我が家に必要ない」
と一蹴された。
皆が持っているからというのは理由にはならなかった。

中学生の頃、クラスメートが塾に通うようになり、
焦った私は「せめて夏期講習に通わせて」と
親に頼んだことがあったが、
「夏期講習ぐらいでうちの子が勉強できるように
なるとは思えない」という理由で一蹴された。
喜んで通わせてくれるに違いないと思っていた
私が間違いだった。

今となっては、ふたりしてのんびりとテレビを
見て過ごしているから、少しはコロナ脳に
なっているかと思ったけれど、違った。
ぶどう狩りに行こうと誘ったら、
フツーに「OK!」。

そんなわけで、先日、ぶどう狩りに行った。
大きな農園で、家族連れでかなり賑わっていた。
室内にある受付の前には消毒スプレー、
検温代わりのサーモグラフィーが設置してあった。
コロナ対策としては、もうこれで十分すぎるほどじゃないか?
室内ではマスクをしている人がほとんどだったけど、
そもそもぶどうをがっつり食べに来ているので、
農園では多くの人が付けたり外したり。
屋外の炎天下、コロナより熱中症のほうが大きなリスクだ。
東京から来たかどうか確認されることもなかったし、
そんなことさえ誰も気にしていないという感じ。

巨峰の粒を次から次へと口に運びながら
まわりを見渡す。
ここには「日常」があるなあ、と思う。
コロナ恐怖症にかかっていない「庶民」がいる。
知識人といわれる人たちが
PCRだのクラスターだのロックダウンだのと
慌てふためき、右往左往している中で、
「来たいから来てますが、何か?」と
思っている人たちが集まっているのだ。
これこそ、圧倒的なリアルではないか。

庶民万歳!!!

両親とともに、ひたすらぶどうを食べ続けた。


汗だくになりながら巨峰を頬張ったぞ~


笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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