国家にはどのような存在意義があるのか。果たして、そのことが、学校教育の場でしっかり教えられているのか。教科書にちゃんと記述されているのか。『新しい公民教科書』(代表執筆者・小山常実氏)では、国家の役割を以下の4つに整理している。①防衛②社会資本の整備③法秩序・社会秩序の維持④国民一人ひとりの権利保障的確な整理の仕方だろう。具体的には、以下のような記述が見られる。「歴史を振り返ると、外敵からの防衛は国家の重要な役割でした。また、道路や橋の建設など、土木工事を行って、生産と生活の基盤となる社会資本の整備を図ること、そして法を制定し、法に基づき社会秩序を維持し、国内に平和をもたらすことも、国家の重要な役割です」(単元14「国家の成立とその役割」)「国民国家はそれまでの国家の役割である、防衛と社会資本の整備と社会秩序の維持とともに、国民一人ひとりの権利の保障を新たな役割としてとり入れたことになります」(単元15「立憲主義の誕生」)わが国の戦後教育では、戦前・戦中の「国家」主義への“反動”からか、国家を軽視又は無視、更に敵視するような傾向すらあった。他のどの科目よりも、最も「国家」というテーマを真正面から取り上げるべき“公民”教育においてさえも、『新しい公民教科書』第3版(平成24~27年版)の登場まで「本格的に国家論を展開した教科書は存在しなかった」(小山氏)という。驚くべき事実だ。そもそも「公民」とは、歴史上、豪族らの私的・個別的な支配から脱し、国家の公的・普遍的な統治のもとに、“改めて”位置付けられた民衆を意味した。又、一般的にも、国家の政治に参与する地位にある国民を示す。ならば、公民教育に“先ず”求められるのは、「国家」についての健全な基本認識ではあるまいか。その意味で、同教科書が各地の教科書採択地区(採択の権限は地元の市町村教育委員会にある)で採択され、より多くの中学生の手元に届くことを期待したい。又、既に一般向けに刊行されている『市販本 検定合格 新しい公民教科書』(自由社)も、社会人に広く読まれて欲しい。【高森明勅公式サイト】
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