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高森明勅
2020.6.18 06:00皇統問題

誤植・脱文のオンパレード

稲田朋美衆院議員の事務所から女性議員活躍の会編
『皇位継承 論点整理と提言』(展転社)が送られて来た。
昨年10月から12月にかけて、同会(稲田共同代表)で皇位の安定継承
を巡る勉強会が開かれ、その講師の1人として招かれた。
同書はその記録だ。
講師は、私以外に櫻井よしこ氏、所功氏、百地章氏など。中に、必ずしも専門家とは思えない人が招かれていたのは、「保守」の論客として選ばれたのだろう。一方、招くべき専門家が外されているのは、「保守」系ではないと
判断された為か。
ならば同会としては、私も一応「保守」の端くれと見なしたということか。
私自身は、保守・リベラルいずれからも、学ぶべき点は謙虚に学びたい
と願っている、一介の平凡な日本人に過ぎない、と自覚しているのだが。

それはともかく、同書の刊行については予め同意を求められていた。
ところが、いつまで経ってもゲラ刷りが送って来ない。
そこで過日、不審に思って事務担当者に問い合わせて、驚いた。
既に印刷に回っていて、近く刊行予定とか。

私の文章については、思わぬ手違いがあったらしい。
私も長年、講演や執筆を続けており、書き下ろしの単行本や、
講演・シンポジウムなどの記録が刊行されたことも、勿論少なくない。
しかし、著者にただの一度も校正の機会が与えられないまま、
文章や発言記録が公刊されるなんて非常識な経験は、さすがに初めて。

この度、送られて来た本をざっとチェックすると、誤植がおびただしくある
(それも、「皇籍離脱」とあるべき箇所が、何故か正反対の「皇籍復帰」に
間違っていたりする)。
だけでなく、文章の脱落すら何箇所もある。
頭を抱えたくなるような惨状だ。
しかも、削除するはずの質疑応答の部分が、私に何の断りもなく、
ノーチェックで活字になっている。
一般的なテーマでも、こんな杜撰(ずさん)なやり方は、
著者に対しても、読者に対しても、甚だしい非礼だろう。

ましてや、重大この上ない皇位継承をテーマにした刊行物には、
あるまじき粗略さではないか。
自分で責任を負いかねる文章が、私の名前で公表されたのは、残念だ。
でも、そんな大きな欠陥があっても、予断と偏見なく、
理性的に読んで貰えば、誰の意見が最も妥当かは自ずと明らかだろう。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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