東京新聞(5月31日付)に私のインタビュー記事が掲載された。
「代替わり考 皇位の安定継承」というシリーズ。
これまでに小田部雄次氏、河西秀哉氏、所功氏、百地章氏などが
登場している。それぞれ代表的な研究者だ。私の記事の一部を紹介する。「憲法は皇位継承の『世襲』制のみを定め、皇室典範で『男系男子』
に限定している。
現在は男系男子にこだわるあまり、世界最古の君主の家柄である
皇室それ自体が消滅の危機に直面している。
皇室典範の男系男子の縛りを削除し、女性皇族の内親王に皇位継承資格
を認めて結婚後も皇室で活動してもらうのが望ましい。
皇位継承方法は、これまでの理念が直系優先主義だったことに照らし、
男女の性別に関係なく『直系長子(第1子)』を優先する制度に
するべきだ。…男系男子に初めて限定したのは明治の皇室典範だ。
明治には前近代と同様に正妻でない『側室』が存在し、側室が生んだ
非嫡出子にも皇位継承資格が認められていた。
明治天皇や大正天皇もそうだが、歴代天皇の半数近くは非嫡出子だ。
もし歴代天皇に正妻しかいなかった場合はどうか。
女性天皇と史実性に疑問がある天皇や未婚の天皇などを除き、
96代の正妻を調べると、34人(35.4%)は男子に恵まれていない。一夫一妻制なら3代に1人は跡継ぎの男子がいなかったことになる。
側室制度は昭和天皇のときに廃止され、現在の皇室典範では非嫡出子
という制度的な『安全弁』も無くなった。
いまは歴史上、最も制約の厳しい皇位継承制度であり、
行き詰まるのは必然だった。…一部では、男系男子の縛りを残し、旧宮家系の血筋の独身男性に
皇籍を取得してもらう案が唱えられている。
だが一国民として生まれ育った人が突然、皇族になっても、
国民の信頼と尊敬を得られるだろうか。
そもそも旧宮家の男系継承も側室に支えられた歴史を考えると、
皇位の安定継承に資することにならない」男系継承に側室制度=非嫡出(庶出)継承が果たして来た
貢献は絶大だった(皇位の継承も宮家の継承も)。
しかし、その可能性は既に失われた。
にも拘らず、乳幼児の死亡率の低下や医療水準の向上などを持ち出して、
現に3分の1以上の天皇の正妻に当たる方々が男子を生んでおられないという、
冷厳な現実から敢えて目を反らそうとする者が、僅かながらでもいるのは
残念だ。かつて、戦後における“男系維持論”の先駆者と言うべき葦津珍彦氏は、
率直に以下のように述べておられた。「女系継承を認めず、しかも庶子(非嫡出子)継承を認めないと云ふ
継承法は無理をまぬかれぬ」と。
故に、ご本人は非嫡出継承の再容認を訴えられた。
男系継承に拘(こだ)りながらも、側室不在=非嫡出の継承否認という
条件下では、その限定を末永く維持するのは「無理」という現実を、
きちんと理解しておられたのだ。【高森明勅公式サイト】
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