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高森明勅
2020.4.25 06:00皇統問題

「女系派」はいない 

皇族の安定継承を巡る奇妙な誤解の1つ。

男系派と女系派が激突している…という錯覚。
しかし、「女系派」なんてどこにもいないだろう。
男系派というのは、皇位の継承において血統を男系に「限定」するか、
男系を「優先」するか、どちらかの考え方。

だったら、女系派は女系限定、又は女系優先という考え方でなければ、
男系派の主張とうまく対応しないはずだ。
しかし、女系限定は勿論、女系優先という意見を唱える論者が、
どこかにいるだろうか。

寡聞にして私は知らない(「直系」優先という考え方はある)。

男系にしろ、女系にしろ、“単独”の系統だけに限定していては、
側室が不在となり、「非嫡出」の継承が否認された以上、
皇位の継承は行き詰まる他ない。

そのような現実への、シビアな認識をしっかり前提に据えているか、
それとも、その冷厳な現実から目を背けて、ひたすら妄想の中に
逃げ込もうとしているか。
その対立があるだけだ。

元内閣官房副長官だった古川貞二郎氏へのインタビューで、
産経新聞の記者がこんな質問をしていた(4月16日付)。

「象徴天皇制が維持できるのであれば、必ずしも女性・女系天皇には
こだわらないのか」と。

コーヒーを飲んでいたら吹き出すところだ。
何と愚かな質問か。

「象徴天皇」の維持・継承の為でもないのに、やみくもに
「女性天皇・女系天皇にこだわ」る人間が、一体どこにいるのか。
上記の現実認識に立てば、いつまでも明治以来の「男系男子」限定に
拘泥していると、皇位継承それ自体が危うくなるのは、明らか。

だから、それを普通に見直そうとしているに過ぎない。
何を勘違いしているのか。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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