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高森明勅
2020.4.13 06:00皇統問題

皇室典範改正案の訂正

私が以前、公表した皇室典範改正案(拙著『天皇「生前退位」の真実』ほか)。
今ではいくつか訂正すべき箇所が出て来た。
その1つは「皇太弟・皇太妹」を追加した箇所。具体的には、私案の8条2項・11条2項・17条1項1号・19条・22条など。皇室典範は改めて言うまでもなく、皇位継承の「直系」主義を採用している。その当然の帰結として、直系の皇嗣(皇太子・皇太孫)と傍系の皇嗣(皇太子・皇太孫でない皇嗣)の位置付けに、明確な格差を設けた。①「皇太子」「皇太孫」という“特別な称号”の有無をはじめ、
②前者には皇籍離脱の可能性が一切否定されているのに対し、
後者の場合は必ずしもそうではない。又、③摂政の任の更迭の扱いでも、
前者と後者には格差が認められる(摂政の就任順序も、前者は皇太子・
皇太孫と名指しされ、後者は親王・王に含まれるという格差があるものの、
事実として就任順序そのものに影響は無い)。

更に、④成年に達するのも前者だけが18歳に繰り上げられている。
そうした両者の格差への配慮が十分でなかった。
その為に、傍系の皇嗣にも「皇太弟・皇太妹」という、直系の皇嗣に
“準じた”特別な敬称を追加する条文案にしてしまった。
今の皇室典範のままでも、歴史的には“皇太弟”と称されたような
お立場の方が現れ得ることは当然、予測できた(今の秋篠宮殿下が
まさにそれに当たる)。
にも拘らず、典範はそのような方への特別な称号を“敢えて”用意しなかった。
それはまさに、直系主義→皇嗣であっても直系と傍系では格差→称号の
有無でも格差、という整合的な体系に位置付けられる事実だった。

そのように考えると、傍系の皇嗣に改めて称号を設けるのは適当ではない、
と思い至った(だから皇室典範特例法でもそうした称号を設けていない)。
よって、私の改正案から「皇太弟・皇太妹」という称号を削除すべきである
と考え直したので、ここに報告しておく。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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