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倉持麟太郎
2020.4.2 03:30

「ロックダウン」て何のこと言ってんの?~コロナでとりうる法的措置について整理してみよう~

巷で「ロックダウン」なる言葉が独り歩きしている。緊急事態宣言?都市封鎖?

いやいや、一体いかなる法的・科学的根拠に基づくいかなる措置を指して言っているのかまったくもって不明です。

適切な対処は重要ですが、なんらの強制力のない事実的要請を”あえて”利用して、責任とる気まったくない公権力の対応は、「主権」の点からも、「人権」の点からも挟撃されるべきですので、しっかり監視しましょう。

「非常事態に批判ばっかりして!」とか言ってる人々もいるけど、平時から思考停止してるから有事も思考停止しましょうなんてそんな輩はどうぞ安倍首相と小池都知事のなすがままでご勝手に。

ちょっと整理しましょう。

 

日本の法体系で、いわゆる海外のような「都市封鎖」はできない!】

現在の日本の法体系で、今回のコロナに関する措置をとりうる法律は

①新型インフル特措法、

②感染症法

があります。

①新型インフル特措法については、「緊急事態宣言」が出されると(出されると、だよ!まだ出されてもないよ!)

45条1項:「生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。」

45条2項:「新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間において、学校、社会福祉施設(通所又は短期間の入所により利用されるものに限る。)、興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条第一項に規定する興行場をいう。)その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者(次項において「施設管理者等」という。)に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。」

ができます。

a)外出規制の要請(45条1項)

b)施設使用の制限の要請(45条2項)

どっちも「要請」やないか!

つまり、刑罰による強制力はありません。新型インフル特措法では、罰則を伴う措置をとれるのは、緊急事態のために必要な物資の譲渡や収用や保管を命ぜられた所有者がそれを拒否った場合(55条)や、そのための立入検査を拒否った所有者(72条)にしか、罰則を伴った強制措置はとれません。

さらにいえば、国家の責任で緊急事態を発令し、罰則を伴った措置をとるわけでもないので、「補償」の規定や、措置に関して事後的に司法的救済が可能であるといった規定は存在しません。

また、新型インフル特措法の緊急事態宣言では、少なくとも、「地域」や「期間」「概要」を特定して公示する必要があるので(32条)、現在の都知事等による謎の「週末自粛一本勝負!次はいつからいつまでかなぁ~?」みたいなことはありません。

②感染症法ですが、

こちらは割と強い措置(建物封鎖、交通規制)がとれます。ただ、この法律は、エボラ出血熱・ペスト(1類)やSARS・MERSのようなものを想定(2類)していることと、基本的には、この場所感染しててやばい!という場所と期間を限定しての措置しかとれません。

 

32条1項:「一類感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある建物について…期間を定めて、当該建物への立入りを制限し、又は禁止することができる。

33条:「一類感染症のまん延を防止するため緊急の必要があると認める場合であって、消毒により難いときは、政令で定める基準に従い、七十二時間以内の期間を定めて当該感染症の患者がいる場所その他当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある場所の交通を制限し、又は遮断することができる。

34条:「感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要な最小限度のものでなければならない。」

 

見ていただければわかる通り、建物封鎖にしても、交通規制についても、基本的にはそこで感染症の患者が発見されるなりして、「この建物やばいよね」とか「この付近の交通機関ストップしないとやばくない」という場合に限って、規制ができます。しかも、交通規制にいたっては72時間やぞ!!

感染症法は罰則がありますが、罰則という強制的措置を伴ったとしても、72時間という制限や、この建物感染源です、みたいなかなり限定的な要件が伴っています。

とてもじゃないけど、海外のような、外出したら刑罰課される!とか、包括的に都市の交通機関規制するとか、できる法律はありません。

そんなのないのに、「ロックダウン」という言葉だけを一人歩きさせている公権力とそれを垂れ流すジャーナリズムは罪深いね。ほんとに。

そしてまた、そもそも法的根拠も明らかにされないまま「自粛」を「要請」されて、萎縮しまくるこの市民社会。小池都知事や安倍首相がいう「要請」は、上記法律の「要請」でもないですからね!事実上のお願いです、こんなの。責任取る気もない彼らの逃げの一手です。

高齢者に対するケアや、コロナの特徴として、「感染すれども発症せず、されどバラマキ」という危険があります。こういう、感染して保菌してるけど自分は大丈夫な人を適切にどこかで待機させるような法的な手当ては必要かもしれません。

本当はこういうのはそれやって給料もらってるマスコミがちゃんとファクトベースで法律の条文含め調査して報道してほしいのですが、およそ機能していないので、自分の頭の整理とともに書いてみました。

とにかく!今必要なのは、補償ですよ補償。がっつり休んでいいから補償。私の顧問先も中小ばかりですから、本当に苦しんでいる。

この国に国家主権や国家の責任がなくなって久しいのか知りませんが、ほんとに、マスク二枚で補償だなんて、お釈迦さまでもおもうまいて

倉持麟太郎

慶応義塾⼤学法学部卒業、 中央⼤学法科⼤学院修了 2012年弁護⼠登録 (第⼆東京弁護⼠会)
日本弁護士連合会憲法問題対策本部幹事。東京MX「モーニングクロ ス」レギュラーコメンテーター、。2015年衆議院平和安全法制特別委員会公聴会で参考⼈として意⾒陳述、同年World forum for Democracy (欧州評議会主催)にてSpeakerとして参加。2017年度アメリカ国務省International Visitor Leadership Program(IVLP)招聘、朝日新聞言論サイトWEBRONZAレギュラー執筆等、幅広く活動中。

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