昭和47年のお誕生日を控えて、当時は皇太子であられた上皇陛下に、
記者から次のような質問がなされた。「先の総選挙で天皇制に批判的な共産党が躍進する(第33回総選挙で38議席を
獲得して大躍進した)など、政治情勢が変わりつつありますが」と。
明らかに皇室に対して悪意を含んだ質問だろう。
しかも、次代の天皇たるべき皇太子に“政治的”な発言を求めたに等しい質問で、
その点からも非常識だった。これに対するお答えは以下の通り。「日本の皇室はヨーロッパなどと違い、
政治から離れているのでどうということは
ありません。
天皇陛下(昭和天皇)からもかねがね、これまで時の政府がどう変わろうと、
永続してきたところに意味があると聞かされています。
明治以降、政治にかかわりを持たれたこともあったが、本来は政治から中立的で、
それらを越えたものであり、今後もそうあらねばならないと思っています」と。共産党が「天皇制」への姿勢を大きく転換する以前のご発言だ。
当時は、共産党を加えた民主連合政権の樹立にも、一定の現実味が感じられていた。
そうした政治情勢の中でも、「どうということはありません」と言い切っておられる。
お見事な泰然自若ぶり。政治を越えた皇室の在り方と、それへの国民の信頼に、強い自信をお持ちだったのだろう。
現にその後、共産党の側が、皇室への態度を改めざるを得なくなった。
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