「女系」という概念は既に自明な事柄のように思い込んでいる向きがある。
その結果、「国民の理解を深めるための啓発も今後の課題となる」
(産経新聞12月1日付)といった、完全に“上から目線”の記事を平気で書いてしまうことになる。
女系について、法的な立場からは次のように説明される。「(家系において)厳密には、女子だけを通じた血族関係をいうが、
広く、中間に一人でも女子の入った、男系でない血族関係を指して
用いられることもある」(『有斐閣法律用語事典[第2版]』)。この定義では、「厳密には」女性天皇のお子様が男子の場合、
その次の世代の天皇は「女系」ではなくなる。
一方、「用いられること“も”ある」という広義の定義では、「男系」の
概念規定と明らかに“不均衡”になっている。
と言うのは、男系は以下のように説明されるからだ。「家系において、男子のみを通してみる血縁の系統的関係。
すなわち、血縁の間に女子が入らない者相互の関係」(同書)
これは言うまでもなく、女系の「厳密」な定義に対応している。
ところが、小泉政権時代の「皇室典範に関する有識者会議」の報告書などは、
もっぱら広義の意味で女系の語を用いていた。
メディアも概ねこれに依拠しているようだ。だが、そうした用法に対しては、以前から専門的見地による批判が
示されている。「“広義の女系”概念は、文化人類学のuterine(女系)ではなく、
non-unilineal(非単系)に相当する」(吉田孝氏)と。「女系」概念は厳密な定義の下に遣うべきだ。
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