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高森明勅
2019.11.29 06:00皇室

「廃嫡」という虚構

近頃、「皇位の安定継承」を巡り、継承順位を変更するのは「廃嫡」だ、
という不正確で感情的な発言が一部の論者から出ている。

しかし、廃嫡というのは、既に継承者としての地位が決まっていながら、
それが変更される場合に当てはまる言葉だ。
つまり、具体的には「皇太子」がおられる場合。
その時に継承順位が変更されれば、畏れ多いが、歴史上の用語で言えば
「廃太子」ということになる。

しかし、今の皇室には皇太子はおられない。
秋篠宮殿下はあくまでも「皇嗣」でいらっしゃる。
その事実を誰よりも深く自覚しておられる秋篠宮殿下は、宮中祭祀にあくまでも
一皇族として「参列」される(殿内にお入りにならない)ことで、自ら“一線”を
画しておられる。

皇嗣は繰り返し指摘してきたように、(次の天皇たるべき皇太子とは違い)
巡り合わせでその時に継承順位が1位の方を指す。
条件次第で順位の変更はあり得るし、その場合も「廃皇嗣」などと呼ばれる
ことはない。

「廃嫡」論は、主に悠仁親王殿下の順位変更を念頭に置いているようだ。
しかし、悠仁殿下の場合は、継承順位が必ずしも確定的ではない皇嗣の、
更にお子様でいらっしゃる。

だから、たとえ順位変更があったとしても、この言葉には当てはまらない。
非礼かつ不穏当な言葉遣いは慎むべきだろう。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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