石川達三『泥にまみれて』を読みました。
男と女、愛とは、かくも残忍か!
いやあ、これはむちゃくちゃすごいわ。
小林先生は、よくこんな男にとって具合の悪い小説を課題図書に…。
しかし、この小説は、女にとっても具合の悪いところがあまりにも
たくさん盛り込まれている。
嫁入りした娘が、夫の芸者遊びを知って、ショックのあまり実家に
戻ってくるのだが、両親に追い返される。
そして母親が娘に対して、自分たち夫婦の歩んできた歴史を語り
ながら「結婚とは?」「女の生きる道とは?」を描く話だけど、
その道のりは・・・タイトルの通りだ。
時代の違いや、私自身とのタイプの違いがかなりあるけれども、
それでも、登場するあらゆる女性の立場において、
心理的に共感できる部分があったし、
登場しないけれども存在しているであろう女性の気持ちも想像して、
石川達三という人は、女の心の深い部分の動きを、よくここまで
わかっているなあとたびたび感嘆してしまった。
あまりに無意識で自覚できなさそうなところまで描写されている
と思う。
小説のなかでは、自由・権利・解放をスローガンにして行進する
女性は批判されている。
対称的に「ひたすら耐え忍ぶ女性」の人生にはなにがあるのかが
描かれているわけだけど、その姿を、いまの価値観で眺めると、
「あり得ない」ということになりがちだろう。
けれど、それではあまりに表面的すぎて、もったいない受け取り方
だと、改めて確信できる部分がたくさんあった。
それは「この女性のようにあるべき」というのとは、違う。
作品の初出が、昭和23年の婦人雑誌への連載だったというのも
なんだか奥深さを感じた。
しかしこれ、男の人はどういう風に読むのかな??
11月10日(日曜)
九州ゴー宣道場:「九州は男尊女卑か?」
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