大嘗宮(だいじょうきゅう)の屋根を板葺(いたぶき)に変更する
問題を巡り、次のような報道があった。「茅葺(かやぶ)き文化の保全継承を目指す自民党の
『茅葺き文化伝承議員連盟』の山口俊一会長は(8月)30日、
菅義偉官房長官と首相官邸で面会し、11月に行われる皇位継承に伴う
重要祭祀(さいし)、大嘗祭の舞台『大嘗宮』の屋根材を茅葺きに仕様変更
するように要請した。
菅氏は『内部で検討してみる』と述べた。
歴代、大嘗宮の屋根は茅葺きだが、今回は経費削減のため板葺きで
造営される方針。山口氏は面会後、記者団に対し『茅葺きは日本の伝統文化であり
守っていきたい』と語った」(産経新聞8月31日付)これは有難い。
この要請がもっと早ければ、更に有難かった。
しかし、菅官房長官が「検討」を約束されたのなら、賢明な結論を
期待したい。私がこの問題を最初に指摘したのは、昨年12月20日のブログ
「『大嘗宮』気になる変更」だった。
これは、前日の宮内庁の第3回「大礼委員会」で、“板葺(いたぶき)”
の方針が初めて打ち出された、翌日のタイミングだった。
その後も、ブログや講演などで繰り返し取り上げるだけでなく、非力ながら
様々な方面に直接、働き掛けて来た(この間、私の呼び掛けに最も誠実かつ
熱心に応えて下さったのはZ氏)。その後、今年になって、大嘗宮の造営に関して、宮内庁が予定していた
15億4220万円を遥かに下回る、9億5700万円で落札された事実が明らかに
なった(産経新聞6月7日付など)。
大嘗宮の屋根の葺き方に関係なく、経費が6億円近くも削減される事に
なったのだ。
これで板葺に変更する理由はもはや無くなった(元々、僅かな経費削減が
伝統的な萱葺〔かやぶき〕廃止の理由になり得るかは、ともかく)。
古代以来、“直近”の平成まで守られて来た萱葺の伝統(それは大嘗宮の清浄
さの象徴)を、私共の目の前で廃止する愚挙は、かろうじて防ぐ事が出来た
―と思った。ところが奇妙な事に、宮内庁は全く方針を変更する気配がなかった
(役人のメンツにこだわっているのか?)。
その意味で、この度、国民の代表たるべき国会議員のグループが、
この問題で政府に正式に要請して下さった意味は、決して小さくない。
政府には、令和の大嘗祭が後世から残念がられるような事態だけは、
是非とも避けて戴きたい。【高森明勅公式サイト】
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