昭和から平成に時代が変わって間もない頃。
私はまだ30歳代前半だった。
東京駅近くの会場で講演をした。
講演終了後、年輩の方からこんな質問が。「私は先の大戦の際、一兵卒として戦場に出ました。
その時に、私の隣で戦友が頭を撃ち抜かれて戦死した。
だから私は毎年、終戦記念日には靖国神社にお参りしています。
昭和天皇には、亡くなられる前にせめて一度だけでも靖国神社に
お参り戴きたかった。
昭和天皇はどうしてお参りなさらなかったのですか?」と。これには驚いた。
実際に戦場に赴いた世代の人達でさえ、戦後、昭和天皇が靖国神社に繰り返し
ご親拝された事実を知らない。又は忘れ去っている。
私は以下のように答えた。「少し勘違いをされているようですが、昭和天皇は靖国神社に
繰り返しご親拝をされています。
戦前・戦中に20回、戦後にも8回。昭和50年11月を最後に中断されたのは、
同年8月15日の三木武夫首相の参拝が(それ以前にも歴代首相が繰り返し
参拝していたにも拘らず)急に、憲法の政教分離原則に違反する、として
政治問題化し、それが天皇陛下のご親拝にまで“飛び火”してしまったからです。
もちろん、そうした憲法解釈は間違っています。
ですが、“国民統合の象徴”としてのお立場に照らして、政治論争が続いている以上、
ご自身のお気持ちとは関わりなく、ご親拝は行えなくなってしまったのです」と。但し、見落としてはならない事実がある。
それは、ご本人がそうした事情でご親拝が出来なくなってからも、
春秋の大祭での勅使のご差遣(さけん)はそれまで通り続けられたということ。
更に、弟宮の秩父宮・高松宮・三笠宮をはじめ皇族方のご参拝も途絶えることなく、
続けられた。
これは、いわゆる「A級戦犯」(昭和殉難者)合祀後も、何ら変わりはない。
特に後者の事実は、靖国神社に関心を持っている人でも、意外に気付かれない
場合が多いようだ。【高森明勅公式サイト】
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