憲法は皇位の「世襲」継承を規定している(2条)。
それを前提に、憲法より“下位”の法律である皇室典範に、
皇位の継承資格を「男系の男子」と限定している(1条)。だから、素直に理解すれば、“世襲”原則は憲法を改正しない限り変更できない一方、
“男系の男子”という縛りは典範の改正だけで対応可能だ。学説ではどうか。
手元の関係書籍を覗いてみる。「男系の男子に限られることは、憲法上の要件ではなく、
法律上の要件であるから、法律を改正して変更することができる」
(清宮四郎、法律学全集3『憲法Ⅰ〔第3版〕』昭和54年)「(帝国憲法とは異なり)日本国憲法は、憲法上、
皇位継承の資格を男子に限るという規定はなく、法律たる皇室典範によって、
皇統に属する男系の男子と定められているのである。
…皇室典範の改正によって、皇位継承の資格を女子にも認めることと
することが可能であるのはいうまでもない」
(佐藤功『日本国憲法概説〔全訂第3版〕』昭和60年)「継承の資格は…憲法の要求ではないから、皇室典範を改正することによって…
女子の天皇を許すなど、それを変更することができる」
(伊藤正己ら『注釈憲法〔第3版〕』平成7年)「皇室典範は、憲法の制約のもとでその内容を定めることができる。
…女性の天皇の可能性をみとめるかは…
(憲法改正ではなく)立法政策の問題である」
(樋口陽一『憲法〔改訂版〕』平成10年)「世襲とは、その地位につく資格が現に天皇の地位にある人の
血統に属する者に限定されることを意味する。
皇室典範は、この血統を有する者の中で、
継承資格者を『皇統に属する男系の男子』(1条)で、
かつ、『皇族』(2条)に属する者に限定した」
(高橋和之ら『憲法Ⅰ〔第4版〕』平成18年)「しばしば、現行憲法の下でも女性天皇―いわゆる女帝―は
可能かという問題が議論される。これに対する考え方としては、
(a)女性天皇は皇室典範を改正すれば実現可能であるとする法律事項説と、
(b)憲法上、女性天皇までは予定されていないので、
ここまで可能とするには憲法改正が必要だとする憲法事項説とがある。
前説が多数説のように見受けられる」
(大石眞『憲法講義Ⅰ〔第2版〕』平成21年)…以上によって、上述の「素直」な理解が、
学説上も多数説の地位にあると見てよいだろう。当たり前と言えば当たり前の話だが。
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