東京大学名誉教授、小堀桂一郎先生。
言うまでもなく保守論壇の重鎮でいらっしゃる。私自身も親しくご教導賜って来た。その小堀先生が以下のようなお嘆きを表明しておられる(産経新聞4月26日付)。先ず、旧宮家系男子の皇籍取得について。「安倍首相は3月20日、参議院の財政金融委員会で国民民主党の大塚耕平議員から皇位の安定的継承に関わる質問を受けた。…偶々(たまたま)この20日は東久爾(ひがしくに)家の御当主信彦氏が死去された
当日だった。…安倍首相の答弁は、〈これはもう70年前の出来事であり〉、首相自身は〈そのGHQの決定を覆すということは考えていない〉といふものであつた。これでは首相が政権の座に就いて以来一貫して唱えてゐた所の戦後占領体制の克服といふ抱負を、平成時代終焉(しゅうえん)の直前に至つて取り下げてしまつたに等しい。首相の支持層の間に拡がつた幻滅と失望の情は甚(はなは)だしいものだつた。簡単に結論を言へば、皇族といふ氏族の再建は、平成時代に少なくともその基礎工事に着手する事が法的に可能だつた。安倍首相ならばその第1歩を踏み出す決断が出来ようと期待されてゐた。然(しか)し氏は無慙(むざん)にその期待に背(そむ)いた」小堀先生の失望、落胆ぶりが伝わって来る。安倍氏は首相就任以来の決して短くない歳月、ご本人の持論でもあったはずの「再建」策に、何故、全く手をつけて来なかったのか。もはや旧宮家系男子の皇籍取得は無理と断念しているか、そうでなければ
「皇室なんてどうなっても良い」
と考えているか、又はその両方かだろう。次に、靖国神社について。「昭和50年11月…以後靖国への行幸(ぎょうこう)が不可能になつたのは…政権担当側が国の内外にある靖国神社敵視勢力を抑へられず、政治的敗北を続けてゐるからにすぎない」「明治以来4代の天皇の中で今上(きんじょう)陛下のみが御在位中の靖国神社御親拝(ごしんぱい)を果(はた)せなかつた方として後世に記憶されるとすれば甚だ畏(おそ)れ多い事である。現首相は自分自身の靖国神社参拝を励行する事を通じて…陛下の御親拝への途(みち)を敢然と開くべきであつたのに、遂にそれを果せずに終つた」靖国神社ご創建150年の記念すべき今年、先頃執り行われた平成最後の例大祭にも、安倍政権下において首相の参拝どころか、
たった1人の閣僚の参拝すら無かった。