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泉美木蘭
2019.4.23 17:48日々の出来事

「マックイーン:モードの反逆児」

朝から銀座へ、仕事して、映画館で
マックイーン:モードの反逆児」を見て来た。

アレキサンダー・マックイーンは私が一番大好きだった
イギリスのファッションデザイナーだけど、
こんな凄い天才の作品を同時代で見られるのかと思っていたら
人気超絶頂のど真ん中で40歳で自殺してしまって、
あんなに驚いたことはなかった。

ショーがとにかく超絶にぶっ飛んでいたんだよね。
「きれい」ではなくて、
破壊的でグロテスクで現実的、激しく壮絶に美しい。
そして、ただただクレイジーかと思ったら、
英国のテーラーで伝統的な紳士服の針子として下積みしていたから、
人の体の仕組みを把握したしっかりした服を縫う技術を持つという
職人的な芸術家だった。

トリビュート映像
https://www.youtube.com/watch?v=xdUR6-J5XQw&t=10s

ショーでは、ギョッとするようなすごい表現とともに、
なにしろ服が、裾や皺の動きまで全部計算されているのではと
思うほど美しい動きをするので、魅了されてしまう。

映画の内容は、自分が持っているマックイーンのDVDや作品集、
これまでに見たショーの映像とはあまり変わらなかったけど、
家族やプライベートな仲間のインタビューがたっぷりあって、
マックイーンの素顔や発想のきっかけなどがわかって楽しめた。

才能は大爆発するんだけど、クレイジーすぎて人間的な問題が
どんどん出て来るのも、とても納得。
後半の死が近づいてくると、大成功して巨万の富を得つつ、
大勢のスタッフの人生を抱えて、仕事に縛りつけられていく、
でも、えぐり出すデザインとショーは圧倒的に美しいという、
天才の孤独と苦悶の様子にずっとほろほろ泣いてしまった。

いまでも好きでたまに見たりする
「The Horn of Plenty」(2009-2010AW) というショーは、
こりゃ相当頭がイカレてきてるな…と思って見ていたけど、
やっぱり最期のひとつ前の状態でもあって、正気の沙汰でない
状態で作っていたようだ。

「ジバンシー」のデザイナーに就任したときは、
パリの伝統的なブランドらしく、ほとんど王様扱いされて
「ムッシュ…」なんてかしずかれるのだけど、
本人はそんな権威などまったくどうでもいい様子で、
クレイジーで子どもみたいなマックイーンのままだったという話
はかなり面白かった。

自分の先祖であるスコットランド人が、かつてイングランドから
侵略・強姦・虐殺の悲劇に見舞われたと知ったマックイーンは、
「ハイランド・レイプ」というタイトルで、
レイプされて引き裂かれたようにデザインした服を、エイリアン
のようなおどろおどろしい風貌で、ふらふらと歩いてポーズを
決める女性モデルたちに着せて発表し、
「女性蔑視だ!」と総叩きにあったのだけど、

僕はみんなが無視して包み隠してきた現実を表現しただけだ、
僕の服を着た女性は、被害者ではなく、強くて恐れられる存在
でもあってほしい、
僕のショーで、日曜日のランチを楽しむような気分にはなって
欲しくない。会場を出るときは、ふわふわした気分なるか、
嫌悪感を持つかどちらかだ、
という風に言っていたのは、とても印象に残った。

彼の服を着たモデルの女性の言葉も印象に残る。
「女らしい気分にもなるけど、同時に『なめんなよ!』とも思う」

ほかにもいろいろ映画のためにわざわざ作ったオブジェを
使った映像がすごくかっこ良かったし、
字幕が早くて見落としてるから、DVDが出たら買いたいわ。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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