5月1日の皇太子殿下のご即位と共に、
殿下(新天皇)は皇祖(こうそ=天照大神)を祀(まつ)る伊勢の神宮のご神体(しんたい)の神鏡(しんきょう)も、“同時に”受け継がれる。この事実は、一般の人々には些(いささ)か意外かも知れない。しかし、神鏡についての政府見解は以下の通り。「伊勢の神宮に奉祀(ほうし)されている神鏡は皇祖が皇孫(こうそん=瓊瓊杵尊〔ににぎのみこと〕)にお授けになった八タ(尺+只)鏡(やたのかがみ)であって…天皇が伊勢神宮に授けられたのではなく、奉祀せしめられたのである。この関係は、歴代を経て現代に及ぶのである。したがって、皇室経済法第7条の規定にいう『皇位とともに伝わるべき由緒ある物』として、皇居内に奉安されている形代(かたしろ=ご分身)の宝鏡(ほうきょう)とともにその御本体である伊勢の神鏡も皇位とともに伝わるものと解すべきである」(昭和35年10月22日、池田勇人内閣総理大臣の答弁書)ここで神鏡に関して、単に「皇室に“古くから”代々受け継がれ…」といった抽象的な表現を採らず、「皇祖から皇孫にお授けになった」と具体的に述べているのは、甚だ注目に値する。これは『古事記』『日本書紀』の神話に登場する、天照大神が瓊瓊杵尊に神鏡を授けた場面を、そのまま語っているからだ。つまり戦後の政府も、国家秩序の最も中枢に関わる部分で、「神話」を肯定し、受け継いでいると言えよう。その上で、「伊勢の神鏡も皇位とともに伝わるもの」と明言している。見落とされがちな事実と思われるので、
新天皇のご即位を控え、改めて紹介した。