来年開催予定の東京五輪の招致活動に絡む
贈収賄疑惑がまたぞろ持ち上がった。五輪招致には、この種の“後ろ暗い話”が付きまとう。にも拘らず、以前、当時は東京都知事だった石原慎太郎氏が、あろう事か皇太子殿下に招致委員会の名誉総裁に就任して戴きたいなどと放言。殿下をお支えする東宮大夫(とうぐうだいぶ)に「(招致活動は他国の都市との綱引きだから)わが国の皇室はそのような活動にはお加わりにならない」と一蹴された。それに対し、更に「木(こ)っ端(ぱ)役人が何を言うか」といった暴言を吐いて、顰蹙(ひんしゅく)を買う一幕もあった。それでもあの時は、石原氏1人がピエロになっただけで済んだ。だからまだマシかも知れない。問題なのは安倍政権の対応だ。6年前ににブエノスアイレスでIOC総会が開催された折。天皇陛下ご自身が心配され、宮内庁が渋る中、高円宮妃久子殿下に事実上、招致活動に加わられたと受け取られかねない形で、無理にお出ましを願った。直接、宮内庁に圧力をかけたのは下村博文・文部科学大臣と杉田和博・内閣官房副長官。妃殿下ご自身のスピーチは高雅かつ優美で、会場を魅了した。日本の皇室の品格の高さを、改めて国際社会に強く印象付けた、実に見事なお振る舞いだった。だが、その後の展開はどうか。畏れ多い事ながら、汚職疑惑が外国の司法当局の捜査対象となるような活動の一端に、皇族ご自身が加担したかのように見られかねない。これほど皇室に失礼な話はない。当時、「政府は皇室に敬意を持ち、品位を汚さないよう配慮し」た(八木秀次氏)と、懸命に弁護した知識人もいた。しかし、今となっては、そうした弁解も空しい。
政府は自らの失態を自覚しているのか。