安倍首相は御代替わりに伴う改元について、
「国民生活への影響を最小限に抑える観点から、4月1日に(新元号を)発表する」と表明した。具体的には、同日に新元号を定める政令を閣議決定し、新元号を公表する。その背景には皇室典範特例法の附帯決議がある。同決議は政府に対し、以下のように求めていた。「改元に伴って国民生活に支障が生ずることがないようにする」と。国会のほぼ全会一致の決議。なので、政府としては勿論、なおざりに出来ない。その点では、4月1日に政令を閣議決定する事自体はやむを得ないかも知れない(その場合も、平成の前例を踏襲して正式な閣議決定の“前”に、天皇陛下に最終的な新元号案をご報告する=ご聴許を得る手順を踏むべきなのは、言う迄もない)。しかし、実際には新天皇のご即位に伴って“施行”される(そうでなければ元号法第2項に違反する)。ならば、「公布文」に署名されるのは、新しい天皇が即位される当日でも、特段の支障はあるまい。新天皇の時代の元号なのだから、新天皇によるご署名が最も自然なのに、何故それを避けるのか。「4月1日の閣議決定と、新天皇の署名、公布までにあまり時間が空くことには、内閣法制局から『運営上、憲法違反に近い』との指摘が出ていた」(産経新聞1月5日付)と言う。これは例によって、憲法4条の「天皇は…国政に関する権能を有しない」という規定に配慮した“指摘”だろう(消去法により他の条文は想定し難い)。だが、見当違いも甚だしい。政令の公布そのものは、内閣の「助言と承認」による憲法に明記された国事行為だ。閣議決定後、天皇ご本人のお考えで公布の時期が左右されれば、公布は政令が法的効力を持つ前提だから、確かに「国政権能」に関わる事になりかねない。しかし公布の“時期”も、「内閣の判断」によって5月1日とすれば、慣例とやや違って閣議決定から多少時間が空いても、国政権能に関わるとの疑念が生まれる余地はない。「運営上、憲法違反に近い」なんて見方は、全く的外れ。内閣法制局は単にアタマが弱いのか、奇妙な思い込みに囚われているのか、それとも悪意があるのか、
又はそれら複数の組み合わせか。