手塚治虫の『シュマリ』全4巻を読んだ。
古谷経衝はこの作品の中に「アイヌはこの土地の先住民で」
という台詞が「頻出」すると書いていたが、「先住民」と
いう単語は出てこなかった。
そもそも「シュマリ」という主人公は和人であって、
アイヌではない。
この作品は和人と和人の戦いの話であり、アイヌは和人に
搾取される人々として、背景に描かれる。
なぜ「シュマリ」という名なのに、主人公をアイヌにしな
かったのかというと、アイヌの方々の圧力がかかって、
手塚が自由に描けなかったからだ。
この件は、『ゴーマニズム宣言』で描こうと思う。
しかし驚くべきことに、手塚にとっては不本意な出来に
なったこの『シュマリ』という作品、読んでみると
ものすごく面白い。
これで不本意だと言ってるのだから、最初の設定で自由に
描かせたら、どれほど凄い物語になっていただろう。
手塚のストーリーテリングの上手さは、やはり神の域に
達している。