今年2月23日の皇太子殿下
のお誕生日に際しての記者会見で、以下のようなお言葉があった。「昨年の誕生日会見でもお話ししたとおり、陛下のビデオメッセージを厳粛な思いで拝見いたしましたし、陛下のお考えを真摯に重く受け止めております。
また、長きにわたり一つ一つの行事を大切に思われ、真摯に取り組まれるお姿を間近に拝見してまいりましたので、『天皇の退位等に関する皇室典範特例法』の施行日が決まったことを受け、改めて、両陛下のこれまでの歩みに思いを致すとともに、深い感慨と敬意の念を覚えております。
今後とも、両陛下の御公務に取り組まれる御姿勢やお心構え、なさりようを含め、そのお姿をしっかりと心に刻み、今後私自身が活動していくのに当たって、常に心にとどめ、自己の研鑽に励みつつ、務めに取り組んでまいりたいと思います」又、去る12月9日の皇太子妃雅子殿下のお誕生日に際してのご感想には以下のようなお言葉があった。「この先の日々に思いを馳(は)せますと、私がどれ程お役に立てますか心許ない気持ちも致しますが、これまで両陛下のなさりようをお側で拝見させていただくことができました幸せを心の糧としながら、これからも両陛下のお導きを仰ぎつつ、少しでも皇太子殿下のお力になれますよう、そして国民の幸せのために力を尽くしていくことができますよう、研鑽を積みながら努めてまいりたいと思っております」両殿下は共に、天皇・皇后両陛下のお心構えやなさりようから深く学ぶ、というご姿勢で一致しておられる。更に、「研鑽」という同じ語を用いておられる事実も見逃せない。
妃殿下の「研鑽」も殿下と同じく「自己の研鑽」との含意だろう。「自己の研鑽」とは、改めて言う迄もなく「自己を磨き、向上させること」を意味する。こうした語を敢えて遣われた両殿下の謙虚さ、誠実さに胸を打たれる。妃殿下の奥ゆかしさが表現されているのが、「少しでも皇太子殿下のお力になれますよう、そして国民の幸せのために力を尽くしていくことができますよう…」と、皇太子殿下をお支えする務めを
先に置かれた箇所だ。何故なら、皇室において第一義的に
「国民の幸せのために力を尽くしていく」のは、「国民統合の象徴」でいらっしゃる天皇であり、他の皇族は、そうした役割を担われる天皇をお支えする事こそが、第一義のお務めだからだ。天皇に最も近い位置におられる
皇后といえども、その点に変わりはない。ご聡明な妃殿下はご自身のお立場を十分に弁えておられる。皇太子殿下ご自身は今年のご会見で「象徴天皇、そして公務の在り方」について以下のようにおっしゃられた。「過去の天皇が歩んでこられた道と、そしてまた、天皇は日本国、そして日本国民統合の象徴である
という憲法の規定に思いを致して、国民と苦楽を共にしながら、国民の幸せを願い、象徴とはどうあるべきか、その望ましい在り方を求め続けるということが大切であると思います」と。国民は、天皇陛下のご譲位を控えた、皇太子・同妃両殿下の責任感、使命感、
ご覚悟の深さに、気付かねばならない。