天皇陛下の「私的なご旅行」とされているものがある。
例えば以前、わざわざ栃木県佐野市にお出ましになって、田中正造が足尾鉱毒被害の惨状を明治天皇に訴えようとした直訴状を、親しくご覧になっておられる(平成26年5月21日)。“私的な”ご旅行とは、要するに「国事行為」のように内閣の助言と承認を得ることなく、また「公的行為」ほど宮内庁や内閣などの関与もなく、陛下ご自身のお気持ちになるべく沿った形で行われるご旅行に他ならない。だから率直に言えば、そこにこそ最も純粋な大御心(おおみこころ)のご発露を拝する事が出来る、とも言い得る。この度、11月27・28両日に私的なご旅行として静岡県にお出ましになった。その2日目には浜松市の外国人学習支援センターを訪れられた。同市は自動車産業が盛んで外国人労働者が多く、日本人との相互理解の為、互いの言語を学ぶ取り組みに力を入れているようだ。天皇陛下は同センターの受講生の外国人労働者に「日本での滞在が楽しいものになるかは言葉が大切ですからね」「よろしくお願いします」などと優しくお声をかけておられたという。皇后陛下は「2つの国が互いに幸せに暮らしていけるよう」「2つを結ぶものになって下さい」と、丁寧に話をされたそうだ。丁度前日の夜、国会では(長期的な展望も包括的な見通しもなく)外国人労働者を専ら賃上げをしないで済ませる為の“調整弁”として扱おうとする入管法改正案が、十分な審議もないまま衆議院を通過した。国民は、天皇陛下の大御心の純粋なご発露としてなされるご行動が、私どもに一体何を伝えようとされているのかを、
虚心かつ謙虚に自問自答すべきだろう。
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