今号のSPA!はカラーページに安田純平さんの帰国に関して、
ジャーナリスト仲間の常岡浩介さんがインタビューに答えて
いた。
お金のない、儲からない戦場ジャーナリストたちは、
戦場に入る仲間には「顔写真をくれ」と声をかけるらしい。
武装グループに拘束されるなど、何かあったら、お互いに
その顔写真を売ればしばらく食えるからだそうだ。
でも、今回の安田さんの場合は、救出のために仲間達が何度も
現地へ出向いて交渉を行ってきたから、散々出費して、結局
誰も儲からなかった、と愚痴をこぼしているのもユーモラス
だった。
イラク人質事件で吹き荒れた「自己責任論」で、大バッシングを
受けたボランティア活動家の高遠菜穂子さんの団体は、
いまやイラク最大の支援グループに成長しているらしい。
世界中の人道支援団体が高遠さんを頼って活動しているという
から驚いてしまった。
ところで、
安田純平さんが帰国する映像を、私はたまたま写真家の人と
見ていたんだけど、まず最初に交わした言葉が、
「この人、これで当分食べていけるねえ」
「そうだねえ、なかなかこんな体験できないよ」
だった。
以前、ライジングに、米軍兵士らと共に銃弾のなか荒れ狂う
海に飛び込み、ノルマンディー上陸作戦を、「実際に上陸
しながら」写真におさめた戦争写真家ロバート・キャパの話
を書いた。
キャパは生涯定住場所を持つことはなく、
戦場を渡り歩くユダヤ人として過ごし、
スペイン内戦、日中戦争、第二次世界大戦、
イスラエル独立とパレスチナ戦争、第一次インドシナ戦争と
戦場を渡り歩き、数々の報道写真を発信し、最期は地雷に散った。
その遺された写真や文章を読むと、やっぱり戦場ジャーナリスト
というのは、「人より強い」程度の正義感などではやれない仕事
だと感じた。
キャパは、「戦争写真家は、所詮はギャンブラーだ」と言っていた。
どこかに、マグロの一本釣り漁師のような、誰もまだ獲っていない
大物を獲ってやるという狩人のような、獰猛な賭けに出てみせる
性質がなければ、丸腰で戦場になんて出ていけないと思う。
「命の危険さえ顧みなければ、凄い取材ができる」とわかれば、
迷うことなく取材を選んでしまい、「止めても無駄」。
危険地帯に入れば入るほど、どうしようもなく覚醒してしまう、
そんなサガを持つ人、そこになんらかの運がたまたま重なった
人にしかやれないことだと思う。
そして、こういうサガがなければ持ち帰られることのなかった
情報ってたくさんあると思う。
ただ安全な場所でネットのなかを覗いて、
自分のプライドを脅かす、「傷つける」対象をバッシングする
だけというのは、あまりにちんまりしすぎじゃないかなあ。