『SAPIO』9・10月号に
「天皇の畏るべき言葉」という特集。それに、昭和天皇の最晩年にお側に使えた元侍医の伊東貞三氏の証言が載っている。「過去に一度、陛下(昭和天皇)に『お痛みですか』とうかがったことがあります。陛下は『痛いとはどういうことか』とお応えになりました。痛いと訴えることは天皇としてふさわしくない振る舞いとお考えになったのでしょうか。あるいは、国民に心配をかけまいとしたのかもしれません。陛下のお気持ちは私には分かりませんが、痛みについて最後までお話しになりませんでした」と。この証言に接し、私はかつて日本赤十字関係者から伺った話を思い出した。「昭和天皇は最後の111日間のご闘病において、お苦しい中でも不平や我が儘を一切おっしゃらない、まさに理想的な患者でいらっしゃった。ただ困ったのは、『痛い』とか『苦しい』という事すらおっしゃらないので、正確なご症状が分かりにくかった」と。お苦しい不治の病床にあられながら、「痛い」とおっしゃられる事すら最後まで控えられた、天皇という地位の重さ。それは、もはや我々の想像を超えた次元に属しているだろう。
なお、同特集には私も拙い一文を寄せた。