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高森明勅
2018.9.11 13:26皇室

皇室典範から「非嫡出」継承が消えた理由

明治の皇室典範では、側室制度を当然の前提として、
「庶出(非嫡出)」子孫にも皇位継承資格を認めていた。
 
しかし、今の皇室典範ではそれを否認している。
 
こうした制度変更は何故行われたのか。
 
「確かに皇位の永続性というような観点から
考えるならば嫡出子以外にもそういうもの
(皇位継承資格)を認めるというのも1つの考え方であろうとは思いますけれども、
やはり時代の趨勢というようなものの中で道徳的判断というものが漸次変わってきた、
こういうことを考慮いたしまして、
我が国におきます社会一般の道義的判断に照らして、
天皇または皇族の資格としては嫡出子に限る、
こういうふうに考えるのが適当であるというふうに判断された」
(平成4年4月7日、参議院内閣委員会、宮尾盤宮内庁次長)
 
「天皇陛下は国の象徴、国民おのおのの象徴として、
すなわち国民道義の儀表たるべきお方であるのでありますから、
その御地位に即かれるお方も、正当の婚姻によって生まれられた方に限りたい」
(昭和21年12月6日、衆議院本会議、吉田茂内閣総理大臣)
 
「天皇の象徴たる地位に鑑み、
この地位につかれる資格としては、
嫡出に限り庶出(非嫡出)を認めないことが適当と考へたのである」
(法制局「皇室典範案に関する想定問答」)
 
こうした判断、考え方は、
国民的コンセンサスという観点から、確かにその通りだろう。
 
だが、非嫡出子孫による皇位の継承を全面的に排除しながら、
明治の典範が採用した「男系の男子」という限定だけはそのまま維持した場合、
将来の皇位継承がどれだけ危うくなるか、
制度変更に携わった関係者は誰も気付かなかったのか。
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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