皆様、ご無沙汰しております。しばらく一読者になっておりましたが、これから時々、近況から気づいたことなど書き記していきたく思います。
私はいま、昨年末の東京公開を皮切りに、今年5月にかけて半年間の全国順次公開をした『青春夜話 Amazing Place』に続く、二作目の映画(短編)の撮影をしております。
映画批評家としても、映画の企画から撮影、編集から完成、宣伝から公開まですべて経験することが活動への良いフィードバックになると考えました。キネマ旬報や映画秘宝のベストテンにも作品や主演の2人(深琴、須森隆文)を挙げてくださる方がおられ、おかげさまでDVD化が決定し、4月にレンタル開始、5月に発売されました。公開期間は地方含め全日上映会場で観客の皆さんにご挨拶しました。これまで関東圏の外にあまり出たことのなかった私ですが、一生分の国内旅行をした気分です。そして、いい勉強になりました。
そんなわけで、道場当日も地方にいることが多く、参加できない日が続きましたが、タイムシフトでいつも視聴させて頂いております。門弟の方も東京および地方での上映に来てくださった方もおられ、感謝に堪えません。
東京、名古屋で計10回見てくださった方や、大阪、京都、神戸などで計6回来てくださった方もいらして、感想を頂いたり意見交換したのですが、こんな感想が印象的でした。
主人公男女が、「偶然」出会った、つまり一本路地が違ったら出会わなかったかもしれないということに、自分自身の「かくあれかし」というもう一つの人生を重ね合わせたというのです。
小林さんも絶賛していた『君の名は。』にもみられる、現実に積み上げていく恋愛関係ではない、偶然の「入れ替わり」によって、別の人生を歩んでいた男女が突如一つになる。それを、現代の観客は寓話としてではなく、かなり切実に求めているのだということを実感として受け止めることが出来ました。
『青春夜話』の広島県尾道での上映が決まった時、私は滞在期間に短い映画を作ろうとたくらみました。尾道といえば、映画監督大林宣彦さんの出身地であり、『転校生』や『時をかける少女』ほか幾多の大林作品の撮影地でもあります。男女の身体が入れ替わる『転校生』と、ヒロインの初恋の思い出の相手が入れ替わる『時をかける少女』を掛け合わせた発想が『君の名は。』になっていることは、よく指摘されます。
『青春夜話』は映画を見ているときだけ暗がりの中で若者になっているオジサンである私自身を対象化した映画でしたが、次はいわば、現代の観客が切実に求めている「偶然の入れ替わり」の原点かつ聖地たる尾道で、そこを対象化してみようという、小さい作品ですが大きな野心をもって取り組んでおります。尾道から帰って見た、カンヌ映画祭最高賞の『万引き家族』もまた、「入れ替わり願望」の変奏曲であることに気づき、やはり時代の核心はここにあるのだと確信いたしました。
本来ならば、私は物書きに戻って、二作目は長編として来年に撮影開始するつもりでしたが、そこまでの間に、短編とはいえ、こんなにも早く次の映画をやりたいと思うようになるとは、ホンの3ヶ月前は予想もしておりませんでした。
明後日は、尾道で撮った以外の場面を東京で撮影する初日です。不肖私も何場面か出るのですが、主演の深琴さんの写真を目線と同じ場所に貼り付けて、語り掛けるように台詞の練習をしています。我が家の納戸にはまたもやセーラー服や少女っぽいワンピースなどがいっぱい吊るされています。キモくてすみません!