北朝鮮を巡る情勢。
ロシアのプーチン大統領が早い段階で、
「ゲームに金正恩氏は勝った」
と言った通りの展開になっている。
中国は北朝鮮に頼りにされ、
東アジアでの発言力が大きくなり、
アメリカが(格好を付けながら)譲歩して行く姿を
見るのは、悪い気分ではないはず。
韓国は東アジア安定化へのメインプレイヤー
になったつもりで、自ら墓穴を掘っているのに
気がついていない。
アメリカは国際的なプレゼンスの縮減を気にしなければ、
今のところ(開発途上のICBMが完成しない限り)
直接の軍事的な脅威はないし、経済的な負担や地政学的
なリスクも、全て日本にツケを回せば良い。
一番追い込まれているのは日本。
北朝鮮は日朝首脳会談を実現し、
安倍首相に国内で点数を稼げるような
形ばかりの“お土産”を渡して、水面下では
(日本がこれまで韓国にも中国にも行った事が
ないような規模の)巨額の資金提供を約束させる。
それを虎視眈々と狙っている。
なのに、今井尚哉首相秘書官の
「10兆円(!)で拉致問題を解決」発言が、
早々と明るみに出た。
ばかりか、「非核化」の費用が、
トータルで220兆円(!!)
も掛かるという話まで飛び出している。
22日に超党派の拉致救出議員連盟が、
安倍首相に北朝鮮との交渉に「前のめり」に
ならないよう釘を刺した。
それに対して、安倍首相は以下のように答えた。
「相互不信の殻を打ち破り、
日本と北朝鮮が直接向き合いながら、
交渉しながら、解決をしていかなければならない」
「交渉は拉致問題の解決に資するものでなければならない」
議連の申し入れに対する事実上の「NO!」。
「対話ではなく圧力を」と繰り返していた
同じ人物の発言とは思えない。
それとも、北朝鮮が「不信の殻を打ち破」る
具体的な行動を、何か1つでも取ったのか。
あるいは、日本がこれまで根拠も無く
「不信の殻」に閉じ籠っていた、とでも言うのか。
安倍首相が既に前のめりになっているのは
殆ど疑いがない。
それは、「解決に“資する”」という
融通無碍(ゆうずうむげ)な言い回しに明らかだ。
「資する」とは
「(何らかの)役に立つ、助けになる」という意味。
無茶苦茶“広い”概念だ。
どんな些細な事柄でも、
或いはマイナスにしか見えない事柄でも、
「解決に資する」と強弁するのは多分、可能だ。
交渉の“ハードル”を設けているようで、
実は限り無く低い。
分かりやすく言い換えると、
安倍首相は「解決に直接、繋がらなくても良い」
と述べているに等しい。
危うい。