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小林よしのり
2018.6.19 09:26日々の出来事

自主規制はどんどん強化されている

昨日、「FLASH」『よしりん辻説法』のコンテを
見せたが、やっぱりある言葉が問題になった。
上に相談して使用できるかどうか、判断を仰ぐという。

予想していたが、自主規制はしょっちゅうの事だ。
あれもマズい、これもマズい、誰かが傷つくかもしれない、
抗議があるかもしれない、それで表現を変更する、
柔らかくボカす、誤解されないように注釈を入れる、
自分の100%満足する表現なんて出来ない。

その窮屈さは年々、増してきていて、10年前、20年前に
比べたら、相当窮屈になっている。

また「オレのプライドが傷つく」という奴も昔に比べたら
はるかに増えてしまった。
一人ひとりの気持ちにまで配慮してたら、何も描けない。
どこかで必ずプライドが傷ついている者がいるはずだ。

今回の『よしりん辻説法』のコンテは、相当、そういう
自主規制に配慮して描いた。
ラストのコマなどは完全に「自己妥協」で、「あくまでも
わし個人の考えだ」と念を押してしまった。
こんなことはしたことがないが、しょうがない。

それでも、どうしても現代風に言い換えたらダメな言葉
があった。
一応、その注釈もコマを取って書いたのだが、それでも
言葉自体が引っ掛かるかもしれない。

だが、わしの子供時代は、その言葉しか使っていなかったし、
現代風の言葉に直したら、嘘になるし、意味も違ってくる。
わしの大事なエピソードの一つだし、使えないのならば、
いっそ「××」と伏字にしてしまおうと思っている。
本当の言葉を使わせてくれる別の媒体で、もう一度この
エピソードを描くしかない。

今でもこんなに自主規制が強いのに、これで共謀罪とか、
セクハラ糾弾とか加わったら、さらに表現の枠は狭まって
しまうのだろう。
ディストピアへの道を確実に突き進んでいる。
表現の場では、それを実感できるが、一般人は分かるまい。
気づかないうちに言葉が消滅しているだけだから。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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