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泉美木蘭
2016.9.8 17:45

別に私の前でポケモンやってもいいんだよ

おかしいと思ってたんだよ。
この頃、店に出ると、
なんだかみんながやたら私の顔色を窺うような
目線を送ってくる気がして。店のスタッフも、常連のお客さんも、私が
近づくと、さっとスマホの画面を裏返したりするし。

やっとわかったよ。

どうやら私、密かに「新宿二丁目のポケモン取締官」と呼ばれていたらしい。
ポケモン配信直後に、街中でいい大人がぼーっと立ち尽くしてポケモン
やってる姿があまりに気持ち悪いと思ったので、店でも、
「信じられない」「いい大人が気色悪い」「どうかしてる!」
と毒舌吐きまくってたんだけど、実は、ポケモンやってないのは私ぐらい
だったらしい・・・。

なんだかうちの店は、ただいるだけでモンスターだかボール(?)だかが
うじゃうじゃ湧いて出てくるようになってるらしく、ポケモンやってる人なら
誰もが気になって仕方がないんだって。
だけど、私が恐くて、こそこそ隠れてやってたんだって。

たまに、荷物を置いたままふと姿を消す人もいるんだよ。
全然帰ってこないから、どこへ行ったのかと心配になって、外に出て、
通りの様子を眺めてみると、決まって4、5軒先のロックの店の前で
スマホをいじっている。
なにしてんだろと思って、じーっと目を細めて見ていると(近眼だから)、
ふりかえったその人は、「ハッ」という顔をして、何気なーくスマホを
お尻の後ろに隠しながらこっちへ帰ってくる。
「ちょっとメールが・・・」なんて言いながら。
変だなあと思ってたんだけど、どうやら、そのロックの店の前でも、
うじゃうじゃなにかが湧いてるらしい。
私、監視してるみたいになってたわけさ。あはは!

いいんですよ、別に私の前でポケモンやっても。

「だって、木蘭、『ポケモンスル者、人ニ非ズ』ぐらいの勢いだったから・・・」

青い顔で、実はポケモンやってることを打ち明けるみなさん。
たしかに、私、「まったく、どいつもこいつも」ぐらいのこと言ったしね・・・。
いいんですってば、どうぞ自由にやってくださいよ、と言ったら、
その場にいた人全員がスマホを取り出して、モンスターを見せ合って、
盛り上がりはじめたのであった。

おかげで私は手が空いたから、奥に引っ込んでクッキーかじりながら
店のメールをチェックしたりして

(でも店のなかがポケモンに夢中な人ばかりっていうのも、私からすれば
気を遣う必要がなくて楽ちんで、ある意味ラッキーだな)

なんて思っていたら、

「あっ、木蘭いなくなっちゃった・・・」
「ポケモンの話なんかばかばかしくて聞いてらんないって思ったのよ・・・」
「そりゃそうだね・・・あ、いまモンスター出てるよ!」

などなど話し声が聞こえてきて笑ってしまった。
かなりあきれたけど、別に私を恐れることはないです。
どーぞ。好きにやってください。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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