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泉美木蘭
2016.8.23 04:00

貧困女子高生を叩く片山さつき&ネット民の醜悪さ

今朝、小林先生から教えられて事件を知ったが、
NHKの「ニュース7」で紹介された“貧困女子高生”に対するネット上
でのバッシングがあまりに酷すぎる。

小学校5年生のときに両親が離婚、母子家庭となった高校3年生の
女生徒は、クーラーもパソコンもない生活で、
イラストレーターになるために専門的な勉強をしたいが、専門学校へ
の入学金50万円が支払えず、夢をあきらめざるを得ない状況だという。

学校ではパソコンの授業があるが、まったくついてゆけない。
母親は、「ごめんね」と1000円の小さなキーボードだけを買ってくれた
そうで、女子高生は、そのキーボードの前に紙のノートを立てかけて
雰囲気を作り、キーパンチの練習をしている姿を見せてくれていた。
母親を責める様子がないところも胸に残るものがあった。
まるで紙に書いたピアノの鍵盤を弾く子供のようだった。
少しでも活用してみせようとするのは、母親への思いやりもあるように
私は感じた。

顔も名前も、部屋の様子も、クーラーのない生活まで公表しながら、
自分の貧困体験を紹介し、なおかつ6人に1人の子供が貧困状態に
あるということに言及して、自分の言葉で社会に問題定義してくれた
女子高生。
普通の年頃の女の子なら「恥ずかしい」と感じて隠そうとするだろうに、
本当に勇気ある
立派な女の子だなと思った。
話し方も落ち着いてしっかりしていて、悲劇ぶるところもなく、淡々と
現実に目を向ける精神的な逞しさも感じられた。
その奥には、日々苦労する母親の姿にむけられているまなざしが
あるのだろうと想像できた。


ところが、ネットでは、この女子高生のツイッターなどSNSを特定し、
アニメグッズを買っていたとか、映画やアニメイベントに何度も行って
いるとか、ランチを食べていたとか、母親の買ったキーボードはネット
では4980円だぞとか、ネット民のお決まりの
「この程度で貧困と言えない」
などという想像力が貧困すぎるクソ標語の大合唱。

なによりも最悪なのは、このネット民の頭首として、片山さつき
ツイッターでこの女子高生を批判し、NHKに説明を求めるなどと
騒いでいることだ。



先進国日本で、一家に一台、いや、ひとりに一台ともなりつつ
あるパソコンが買えず、夢もあきらめざるを得ないという勇気
ある実態告白をしてくれた女子高生に対して、
気晴らしの映画鑑賞、こまごました好きなアニメグッズの購入
という消費活動でストレス解消することをやめさせ、
ランチを節約して、中古のパソコンを買えと!!



しかも、「ランチを節約して中古のパソコンを買えとは・・・」とツッコミを
入れられると、こう答えている。

きょうび、ランチが1000円台なんて当たり前で贅沢でもなんでもない。
しかも、片山さつきは、「ランチ」と「弁当」の違いもわからないのだろうか。
貧困状態の、多感な高校3年生の女の子が、弁当をつつくだけではつらく、
たまには友達と外食して、おしゃべりしながら楽しくランチを食べてみたい
と思ってなにが悪いのか?
一緒に出かけた友達は、普通の経済水準の家庭かもしれない。
自分の手持ちのお金ではかなり高価なランチだけど、私も友達と一緒に、
あの店で食べてみたい! という気持ちがあったかもしれないのだ。

片山さつきが言っているのは、

「貧乏人ならもっと貧乏人らしい姿を見せろ!
ぼろぼろの姿で、趣味など考えられず、ランチなど夢のまた夢、
日の丸弁当でも食べながら、『進学できない』と訴えろ!
そうでなければ貧困など認めない!」

ということなのだ。
しかも、権力者である政治家が、市井の女子高生に向かって。
顔も名前も晒して、NHKという全国放送で勇気ある告白をした
女子高生に向かって。

しかも、「NHKを追及してやる」と弾圧しようとするのだ。

卑怯さの吹き溜まりのようなネット民の醜悪な罵詈雑言を吸い上げて、
権力を振りかざす片山さつき。いい加減にしろ!!

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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