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泉美木蘭
2016.7.5 15:50

映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』すごかった。

映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』を見てきた。
これは、そこらのスパイ映画では、勝てないな。
ハンパなく緊張するドキュメンタリーだった。

元CIA、元NSA(国家安全保障局)の職員で、最高機密を管理する権限を
与えられていた、29歳システムエンジニアの米国人青年スノーデンが、
米国が、要人だけでなく、一般人ほぼすべての通信を世界レベルで傍受し、
監視を行っているという恐るべき国家権力濫用の実態を暴露した、
2013年“スノーデン事件”の実際の記録だ。

当時、スノーデンが、機密暴露のために暗号化されたメール文書を使い、
ドキュメンタリー監督のローラ・ポイトラスと、
ジャーナリストのグレン・グリーンウォルドに連絡をとったところから、
撮影がはじまっている。
香港で彼らが極秘に落ち合い、ほとんどSF映画のような衝撃の暴露、
そして、スノーデン本人が、顔と名前を晒してメディアに登場し、
米国から告訴され追われる身となり、国連を介して
ロシアへ亡命するまでの
様子がつぶさに記録されており、
2時間弱に編集されている。

出て来るのがすべて本人で、現実の出来事なので、緊迫感が半端ない。
内容が凄すぎて、逆に現実味が感じられないような場面もあれば、
その現実味のなさが、うっすらと恐怖を帯びて背中を撫でてきたりもする
米国に追われたスノーデンを助けるために、現在大使館に軟禁され中の、
《ウィキリークス》ジュリアン・アサンジが電話で作戦を練る姿が出てきたり
もして、これは、かなりびっくりした。
よくこんなところまで撮影したな・・・おいおい、マジで殺されるよこの人達!
・・・というハラハラ感がすごい。
だって、シナリオのある映画と違って、撮ってる人も追われてるんだもん。

英国ガーディアン紙が、スノーデンからの情報提供を得て、
次々と世界的スクープを連発していくうちに、国家圧力がかかりはじめ、
見出しの言葉ひとつ選ぶにも、デスクで顔を突き合わせて慎重になっていく
様子は、あまりに生々しく、
「やっぱり、こうなるんじゃないか・・・!」
と、重々しくのしかかってくる感覚をおぼえた。

「国家権力が、国民の反対する力を潰している。
僕が嫌なことは、
刑務所に入ることよりも、僕の知的自由が侵されること。
人々の知的好奇心が抑えられてしまう

「政府は言う、『たまたまプライバシー情報を拾ってしまう場合はある』。
しかし、これはそんな消極的な感覚で語って良い問題ではない。
この監視によって、我々の自由な発言や行動が委縮させられ、議論が
できなくなっていく。政府は、
我々を極めて攻撃的に追い詰めている!」

強く胸に残った言葉だ。
そのまま、日本人にも伝わってほしいと思う。

スノーデンも、ジャーナリストのグレンも、目的のために相当に頭を使って、
念入りに作戦を練る人間であるところは、個人的に勉強になった。
特に、スノーデン本人がメディアに出るタイミングについては、
「スノーデンという“個人”に興味が移ると、論点がずれて潰されてしまう」
という問題を予測して、何度か話し合われるんだけど、なるほどなあ、と。

どんな真実、どんな体験を、その人が武器として握っていようと、
ただ握っていることを誇示するだけでは、潰されて終わる場合がある。
その武器をどこから、どこまで、どのように出して、どのように使えば
効果が出るかというところは、やっぱり、頭を使わなければならない。
秘密の暴露に限らず、言論や表現の世界にも通ずると思う。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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