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泉美木蘭
2016.6.21 12:10

映画『帰ってきたヒトラー』が凄い!

映画『帰ってきたヒトラー』を観てきた。
これは凄い映画だよ。
序盤、笑えていたものが、後半、どんどん笑えなくなるという。

1945年から、現代のドイツにタイムスリップしてしまったヒトラーが、
虎視眈々と再度の世界制覇を企てながら、芸人としてテレビ出演して
ゆき、その「芸風」と、ハッキリと物を言う巧みな弁舌がバカウケして、
トランプ現象のように、たちまち時代の寵児になってしまうという
ストーリーなんだけど。

主役のヒトラー役は、姿かたち、立ち振る舞い、演説の仕方まで、
あまりにも本物そっくり。
街中で、ドイツ市民と絡むシーンが多くあるのだけど、
仕込みや脚本はあるが、ほとんどはゲリラ撮影したそうだ。
結果、ドイツの人々は、このヒトラーをアイドルのように扱って群がり、
一緒に写メを撮りたがり、ツイッターにアップしたりして、
ズバズバした物言いに魅せられてゆき、笑顔で「ハイル・ヒトラー!」
とナチス式の敬礼までしてしまうという。

ヒトラーがカフェなどで町の人々にインタビューすると、
移民への不満などをぶちまけたあと、「カメラで撮るな」と前置きして、
「大きな声では言えないが、実は自分は右翼的な人間だ」
と打ち明けたり。

ネオナチの事務所へ押し掛けて、ヒトラーになりきった総統と、
党員がアドリブで対面したりもする。

こうして街の声や社会の様子をつぶさに観察し、
「民衆は1933年と同じだ」と気づいたヒトラーが、テレビ番組で
ある演説をするのだけど、この内容があまりにも日本にも当てはまり、
的を得ているのと、空気の制圧の仕方がうまいのとで、観てる私まで、
思わず「そのとーり……そうだそうだ!」と支持する気持ちになってしまう。
しかし、ヒトラーはヒトラー。
やはり劇中には、純血主義そのまんまのセリフがちらちら現れるのだ。

『民主主義という病い』を読んだあとだったから、なおさら深く、
この映画の怖さを体感したように思う。
・・・と同時に、いまの日本に、こんな奴がもし現れたら・・・!!

劇中、ヒトラーが何度か「民主主義」という言葉を出すのだけど、
ネトウヨみたいなアンポンタンの街の青年が、ヒトラーのインタビューに、

「誰か強い指導者に、バシッと、なんとかうまく・・・やってほしい・・・」

と答えた瞬間、すかさずヒトラーはこう言った。
「これが私の求める民主主義だ」
背中がぞくっとした。
超おすすめの映画です。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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