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泉美木蘭
2016.4.1 02:57

ネットの世界は、感性のデオドラント化がひどい

陽のあたる場所にいられる人たちがいれば、その分、割を食って
陰でうごめかなければならない人たちも必ず生まれてしまうもので。
身内でもないのに「陰にいるのはやめなさい」と説諭したところで、
それは、デオドラント化された正義感や、無自覚な優越感でしかない
という場合がほとんどだと思う。

風俗店で女の子に「生き方考えなさい」と説教するおじさん然り。
場末の小さな店で「アンタもさあ、いつまでもこんなボロい店やって
ないで、もっと上を目指したら?」と説教する自己啓発系女然り。

とくにネットの世界は、感性のデオドラント化がひどい。
どんどん症状が悪化している上、それに気づいていない人がいっぱいいる。

ネットで単語を引いて表示されるものは、「現実」ではなく、あくまでも
「情報」のひとかけらでしかない。
それを咀嚼して解釈できるのは、脳におさめただけの知識ではなく、
やはり自分の体験や体感の記憶だと思う。
実際になにかにはまり込んで体験しなくとも、人と面と向かって話して
得た情景の中からしか受け取れない、感性の記憶もいっぱいある。

感性の記憶がなければ熱のこもった言葉にはならないし、
思いやりを秘めた表現に考えを巡らせることもできないし、
自分どころか他人の無自覚さにも気づくことができないと思う。


気になったこと、ひとつだけよろしいでしょうか、
「寮付き、食事付、託児所ありの風俗店もあるようだ」とNHKの記事か
なにかを紹介された方がいらっしゃったと思うのだけど・・・
その取材は、よほど例外的な良店を選んだか、あえて深い面には
レンズを向けなかったか、どちらかなのかなと思いました。

風俗もキャバクラもホストクラブも、寮や託児所があるけれど、風俗の寮は、
一般的には、ワンルームに何人か住まわせて、店の人間が鍵を持って
出勤管理するような状態になっているか、
家具付きのマンスリーマンションに、バッグ一つで駆け込み入居させて
店が保証人となる
代わりに、敷金・礼金・立ち上がり月の家賃を、
女性が前借金として
背負わなければならないというケースが多いです。
家賃は、実際の賃料に何万か上乗せになりますし、
稼げれば、それでも潤うのだけれど、中には売れない人もいます。
決して「困った女性に優しい」仕組みばかりではありません。

かと言って、「店がひどい」と一方的には叩けません。
在籍していた女性が、翌日蒸発してしまうのは日常茶飯事の世界で、
店側も損害をかぶるから。
売れない人が辞めてしまわないように、食事をふるまったり金銭を保証
する店もたくさん
あります。それは、やさしさ半面、そして、売れない人が
絶対に必要だからです。
だって、売れる人に殺到してあぶれてしまう客を、売れない人にうまく
振り分けていくのが店の仕事だからです。

わざわざ細かく書くようなことではないかなと思ったけど、
つまり、こういった条件でも、「ありがたい」「すぐに働きたい」と駆け込む
境遇の
女性達がそれだけ大勢存在する、という現実に、思いを馳せる
きっかけに
なれば・・・と思いました。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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