昨夜はやけに寒く、新宿2丁目は人通りもいつもより少なかった。
店を閉めて帰宅する深夜2時、2丁目で最高齢のゲイのママ、
洋ちゃんに会った。小雨のなか、店の外に、ぽつっと立っていた。
もう81歳になるはずだ。
洋ちゃんはいつも着物を着て、笑顔でいる。化粧も女装もしていない。
《昔のゲイは、もっと内面の美しさが溢れていて、女装なんかしなくても
魅力的な素敵な人がたくさんいたわ》
洋ちゃんの店を訪ねた人は、たいてい、そんな話を聞かされるそうだ。
「おつかれさまです。寒いね、洋ちゃん」
「早いもんだねえ、もう5年だよ、震災」
そう言って、表通りのネオンをなんとなく眺めながら、「おつかれさん」。
洋ちゃんは、優しい笑顔で見送ってくれた。
たった一言の挨拶だったけれど、深夜の
あっという間に月日が過ぎてゆく。
昨年の今日は、たまたま原発被災地での取材の仕事があり、
福島の海沿いの町で行われていた慰霊祭に参加していたが、
今年はいつもどおりの自分の日常のなかにいる。
平成23年の3月から4月にかけて福島県、宮城県、岩手県内で
知り合った多くの友人知人たちも、ずいぶん生活が変化したようだ。
仙台の避難所で出会ったというあるカップルは、結婚して、
5万8000人