ゴー宣DOJO

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泉美木蘭
2015.11.11 14:45

特別番外編☆『もくれんのザ・神様!』

師範方が書かれているように、関西ゴー宣道場後の場外乱闘で、お土産をいただきました。
私も、普通の物をいただいたのなら、その場でのお礼に留めるか、
「今回限りということでお願いしたく」といったお礼を書く程度だったと思うのですが……
なーんかね、どーもね、私の場合、それだけに留めるわけにはいかない、
多大なる期待の込められた「ネタ」を手渡されてしまったの。
ちくしょー関西人、しょーがないね! 今週はライジングがお休みだから、サービスだよ!


『もくれんの ザ・神様!』 特別番外編 
「なんとえらいこっちゃ、クリスタル」

「木蘭さんなら、きっと、気に入っていただけると思います」
帰りがけ、土産物を差し出す関西設営隊の元坂口さんが、やけに
ニタニタと変な自信を帯びた笑顔でそう言うので、首をかしげた。
普通、こういうシーンでは
「気に入っていただけるかどうかわかりませんが…」とか、
「お荷物になってご迷惑かもしれませんが…」とか、
遠慮がちなセリフを添えるのがつきものだ。
設営隊として奔走された好青年で、かなり常識をわきまえている元坂口さんが、
いきなり『気に入っていただける』と笑顔で断言するって、どういうことやろ?
しかも、手渡された紙袋は、びっくりするほど重い。2kgはありそうだ。
中身は、箱に梱包されている。この異様な荷物……あやしい。

『きっと、気に入っていただけると思います』
このセリフに続いて手渡されるずっしり重いもの…。
ドラマの世界だったら、現金だね。賄賂ですよ、げへへへへ。
ハッ! まさかの金塊? それとも……。
どっちにしろ、あの笑顔、普通のものではないな。

◇ ◇ ◇

それにしても、なんでまたこんな重いものくれちゃったんだよお。
一泊分の荷物とともに、ひいひいぶら下げて宿泊先のホテルへ。
ひとまず椅子の上に荷物を置くと、紙袋のバランスが崩れ、こちらへ倒れてくる。
「ありゃりゃ、あぶないあぶない!」
倒壊を防ごうと、あわてて、手ではなくを出したところ、バターン!
2kgの重みに遠心力が加わって、突き出した右膝がしらを思いっきり強打
いてぇ! な、なんやねん、もうこれ!
開けてみる。

こ、これは……。

じゃーん。

『ザ・神様! キャラクターグランプリ2014』
第1位 泉美木蘭 殿

と、刻まれたクリスタル楯

お? ……おう、おう。おうおう! 去年のな! おうおうおうおう!

ライジングの『ザ・神様!』で、毎年年末に、読者企画として行われている
ザ・神様! キャラクターグランプリ
毎回、1年間の連載中に登場したキャラクターを一覧にして掲示して下さり、
集計、発表をしてくださっているのは、関西組の元坂口さんなのです。
2014年の年間グランプリに輝いたキャラクターは、スクナビコナ、サルタヒコ、
シタテルヒメ
など古事記の神々をあっさりと差し置いて……『泉美木蘭』
そう、古事記から逸脱してたびたび登場しては、とんでもない過去を自白する
わたし本人
だったのです。

ちなみに去年のコメント
◎数々のエピソードに、もう参りました。 アホ過ぎて、『古事記』の神々でも勝てない
明らかに最強キャラクター。 モクレンヒメのエピソードはもう神様を越えた!
神様に対抗できる唯一の存在。「現代のザ・神様!」泉美木蘭が登場する爆笑エピソードは鉄板!

あちゃー。自分の書く神話の連載で、神様差し置いて自分が一番輝いてしまい、
自分の名の刻まれた楯をいただくとはーー!
そして、このクリスタル楯に刻み込まれているキャラクターは・・・

私が昨年末に描いて掲載した、ちっさいおっさん・スクナビコナ(実物大)



う、ううう。ちっさいおっさんが、なんとなく、クリスタルに私に笑いかけてくる。
な、なんだろうこの釈然としない感じ。
い、いや、たしかにものすごい存在感のある、嬉しい記念品なんだが。
私はなぜよりにもよってこのおっさんの絵を描いてしまったんだ……。

とにかく新幹線でえっちらおっちら自宅まで持ち帰ることに。


◇ ◇ ◇


あれだけ重くてヒイコラだったのに、うちの部屋に置いた
途端
あまりの透明さに存在感を失ったちっさい薄いおっさん。

さて、どこに置こう。
かなり
重いし、しかも、鋭角に尖ってる。


わたしの部屋は、引越した頃、机やベッドの置き場を探してぐるぐる四方八方へ
移動して回るほど、家具の置き場に神経を使った。
なぜなら、アパートごと部屋がちょっと傾いているからだ。いまでも、ベッドの枕の
位置には気をつかう。足のほうが少し下がっているので、逆さまに寝ると、朝には
首の骨が詰まって背がちょっと縮んでいるのだ。ほんまやで。

あ、そうだ。本棚の上に、しまうところがなくなって積みあげたきりのCDがある。
その前に置けば、地震のときに倒壊のストッパーになるかも。

若かりし日のピーターが歌う『人間狩り』7インチ盤を透かしてみた。
ピーターの胸元から、亡霊のようにちっさい薄いおっさんが立ち昇っている。
レコード大賞の記念品ぽい気がしないでもない。

でもだめだ。この本棚は手前に向かってちょっと傾いている
地震のとき、CDだけだなら大したことないが、もしもこのちっさい薄いおっさんが
バランス崩してこっちに落下してきたら、私は、死ぬか、足の甲の骨を折る。

どうしよう、あちこち持ち歩いて部屋のなかをおろおろしているうちに、
ちっさい薄いおっさんに、ベタベタと指紋がついてしまった。


とりあえず風呂に入れてみる。
なんの面白みもない写真になってしまい、わざわざお湯を張ったのが腹立たしい。
といっても、一緒に入浴している写真だけは公開できない。
この楯なにも隠してくれないから、あらぬものが惜しげもなく撮れてしまうし、
そんな写真撮ってる自分はけっこう笑えない。


バスタオルで身体を拭いてご満悦のちっさい薄いおっさん。
だから、なんでこんなに写真映えしないんだよ、ちくしょー!!
うちのあらゆる物がカラフルすぎるし、おっさんの顔がイラッとくる!!

無意味に寝かしつける。


つ、つまらない。このつまらない写真を嬉々として撮ってる私の姿だけが面白い。

とりあえず、さっきの本棚の対面にあるもう一台の本棚に置いてみることにした。
ここなら、奥にむかって傾いているから、地震が来ても手前には倒れてきづらいかも。
さっきから地震、地震とうるさいけど、このアパート、まじめにとんでもなく揺れるのよ。


しかし、どうしてこうも存在感の薄すぎる楯が存在するのか……。
背景が透けてしまって、ちっさい薄いおっさんがまったく目立たないし、
文字なんか全然見えないから、これが記念楯であることすら主張してくれない。
ちっさい薄いおっさんよりも、奥の
檀一雄のほうが前面に出てるじゃないか。
どうせならこれはどうだ。

「三島由紀夫がよっぽど好きで、オブジェ作ってしまった人の本棚」に
変わってしまった。でも、これはこれでかっこいいし、ウケも良さそう。

あ、そうだ。もっといいのがあった。


高森先生からいただいた、古事記の本を添えてみる。

どうよ、これ!?
うっすらだけど、ちっさい薄いおっさんが見えているし、
しかもおっさんの表情があまり前面にアピールしてこないから、
置いてあってもそんなにイラッとしないし、文字もまあ読めるし、
おまけに『古事記神代巻』、ぴったりじゃない?
ハイ、これで決定。高森先生、この本の扉、切り取って使います。

無事、わが家に古事記神代巻の記念品が鎮座!
というわけで、『ザ・神様!』特別番外編のネタを提供していただきまして、
ありがとうございました。
私にとっては、なによりも、ちっさい薄いおっさん(しかも重い)を受け取った
自分をどう面白く書こうか、それを考えてる時間が一番楽しかったです。
ですが、くれぐれも今後はこういったお気づかいは無用でお願いいたします。

そして、今年も、12月には読者企画『ザ・神様!キャラクターグランプリ』が
開催されるそうです。年末に向けて、ますますライジングをお楽しみに。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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