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泉美木蘭
2015.5.28 02:56

白河シネマパラダイス

福島県白河市に「白河シネマパラダイス」という市民の手で
作られた映画上映プロジェクトがある。
発足以来、手づくり&体当たりで営業を行い、配給交渉をつづけ、
集めた映写機は4台、育てた映写技師は4名。
地元民のためにフィルム映画を上映しつづけて10年になる。
いまや、東京の単館でもなかなか見られない垂涎ものの名作も
かけてしまうという稀有な映画上映会になっている。

白河シネマパラダイスの良さは『映画ファン・業界人が絶賛の』
といったセンスの追求をせずに、
「えっ、こだわり? ・・・とくにない」
のスタンスで、あくまでも地元民が、家族で、娯楽として、
気軽に、普通に、観に来られる映画上映を行っているところ。
わざわざ都会なんかに憧れて出掛けなくても、うちの地元は
最高じゃないか、というのが目的。
スタッフたちと話しているといつもこう感じる。


『映画を愛する前に、ふるさとを愛している』


だから、配給交渉もうまく進みやすい。
なにもふりかざさない、ごく当たり前の心ある地元民として話を
するから、自然に打ち解け、無理のない輪が広がるのだ。

3.11震災後は、阪神淡路大震災の復興の光となった神戸の映画館
「三宮シネフェニックス」が、16年間の営業を終えることを機に、
使用していた35m/m映写機を「神戸より、福島へ」寄贈するという
ドラマも生まれ、新聞などでも話題になった。


サンゴーの映写機ってめちゃデカイんですよ!
その白河シネマパラダイスに、ひょんなきっかけで企画コーディ
ネーターとして参加することになった私は、以来、
「良い映画だったら、まずは配給元をチェック!」。
イチ押し作品がいくつもあって、イチどころかジュウ押し状態
なんだけど、あれもこれもかけられたらいいなあと計画中。
そして、いつか、同じく映画難民の私の地元にも、シネパラを
作ることができたら……と話したりしている。
昨日は、東京国立近代美術館フィルムセンターへ足を運んだ。
過去100年分の映画フィルムを収集・複製・保管している国の機関で、
国会図書館のようなもの。
過去の映像フィルムはすべてが当時の貴重な資料となるため、
集めに集められて現在7万5000本以上だそうだ。
最近のフィルムはペットボトルのような素材で作られているので丈夫
だが、昔のフィルムは可燃性のセルロイド製で、気温30℃をこえると
自然発火することがある。そのため、特別な温度・湿度で保管されて
いる。
名画『ニューシネマパラダイス』にも、この現象がおきてフィルム
が発火してしまい、映画館が火事になるシーンがあるので、
ご存知
の方も多いと思う。

「管理に手間がかかっても、それでも原版をデジタルで作るのは、
非常に危ないことだと思っています。
デジタルは、ブルーレイだのDVDだの規格がどんどん変わって
再生機器が失われてしまう。そして、原版そのものが観られなくなる。
でも、フィルムなら、そこから、未来のその時にできた再生機器に
あわせたメディアに何度でも焼きなおすことができる。
だから保存するならフィルムが最適なんです」

研究員の方は力強くこう言っていた。


で、この白河シネマパラダイスの持つ映写機・映写の技術と、
東京国立近代美術館フィルムセンターに保存されている大昔の
映画フィルム、それから、私の執筆・朗読。
これをあわせて面白い企画を、夏の映画祭でやることになった。
すごく大変なのはわかっているが、それ以上にわくわくする。
泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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