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泉美木蘭
2015.3.13 06:56

人間の恥部

福島県双葉郡大熊町の中間貯蔵施設に、
汚染土の搬入がはじまったとニュースで見た。

浜通りを車で走っていると、そこらじゅうに汚染土の
詰まった土嚢が積み上げられているし、
海沿いの工業団地には、除染作業員や建設業者の
プレハブ住居の奥に、絶句するほど広大な、汚染土の
仮置き場があり、私の胸の高さまである巨大な土嚢が、
6段、7段と積み上げられて壁を作っている。

広野町から楢葉町と車を走らせると、
車道の両脇に広大な田畑の広がる地区が現れるが、
ここはもう農作物のための土地ではなく、
汚染土の仮置き場となっており、
とてつもない量の黒い土嚢で埋め尽くされている。

はじめて通ったときは、そのあまりの光景に、
ハンドルをにぎりながら思わず
「うわっ!」
と大声をあげてしまったほどだ。

もとが田んぼだから水はけが悪く、土嚢のまわりは水浸しだ。
作業員たちは、この水たまりを長靴でびしゃびしゃ歩いている。
人間の恥部 を、これでもかと見せつけられた思いだ。

当然ながらこの仮置き場の土は汚染されているわけで、
30年留め置かれる中間貯蔵施設は、いくらコンクリート等で
遮蔽されると言っても、地下水の汚染は免れないだろう。
30年たったときに、「では次はうちで」と受け入れる場所があるとは
到底思えない。

みんなが事実を見て見ぬふりをし、やんわりと、とりあえず、ごまかし、
それとなく忘れてしまう未来が来るのを、なんとなく待っている。

「なにが『中間貯蔵』だよ」と言いたくなる。
一体いつまで平気な顔して再稼働にこだわるつもりなんだと、
もっとガチで怒らなきゃならない。


泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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