「小説幻冬」の『おぼっちゃまくん』がやたら好評だが、
あれこそ文芸誌だから描けた作品。
一般漫画誌では描けない。
すぐ抗議してくる奴らがいるし、すぐ抗議に屈するし、
あらかじめ抗議が来ることを恐れて、自主規制し始める。
誰かが傷つくという条件は絶対的な威力を発揮する。
この世の中に誰も傷つく者がいてはいけないという異常な
イデオロギーが蔓延してしまっている。
「傷つくぞ!傷つくぞ!傷つけてはいけない!」
「足を踏まれた者の痛みが分からないだろう!」
この10年、20年で、表現規制はとことん強化された。
一般誌に描くことはストレスを溜め込むことになる。
『おぼっちゃまくん』は「小説幻冬」だからこそ、
わしの能力を十全に発揮して描けているのだ。
「セクハラ」やら「共謀罪」やら、今後も表現の枠を
縮小させていく流れは続くのだろう。
ディストピアへ、ディストピアへ、誰も傷つかない
ディストピアへ。