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高森明勅
2018.3.7 22:00

日本とイタリア、憲法比較

現在の国際法では「武力行使」は一般的に違法化されている。

だから、憲法9条1項は別に“特異”な規定ではない。

例えば、イタリア共和国憲法(1948年施行)にこうある。

イタリアは他の人民の自由を侵害する手段および
国際紛争を解決す
る方法としての戦争を否認する」(11条)と。

これはわが国の憲法の9条1項の趣旨とほぼ重なる。

しかし、同憲法では、この条文の一方で、以下のような条文もある。

祖国の防衛は神聖な義務である」(52条1項)
兵役は義務であり、その制限と方法は法律で定める」(同2項)
軍隊の組織は共和国の民主的精神に基づくものとする」(同3項)

従って、わが国の憲法9条2項以下に、
このような規定があっても、
整合性に何ら不都合は生じない。

問題なのは、9条2項の「戦力不保持」規定。

これによって軍隊を保持できなくなる。

なお「交戦権」は、国家が戦争を行う権利という意味でも、
交戦国の諸権利という意味でも、共に国際法で認められない。

よって同項での交戦権の否認は、
単に国際法の要請を“確認”
したに過ぎず、
1項と同様、国防上の障害にはならない。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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