皇后陛下は平成25年のお誕生日に際しての文書ご回答の中で、
明治の「民間憲法草案(私擬憲法)」について言及された。
「5月の憲法記念日をはさみ、今年は憲法をめぐり、
例年に増して盛んな論議が取り交わされていたように感じます。
主に新聞紙上でこうした論議に触れながら、かつて、あきる野市の
五日市を訪れた時、郷土館で見せて頂いた『五日市憲法草案』のことを
しきりに思い出しておりました。
明治憲法の公布(明治22年)に先立ち、地域の小学校の教員、
地主や農民が、寄り合い、討議を重ねて書き上げた民間の憲法草案で、
基本的人権の尊重や教育の自由の保障及び教育を受ける義務、法の下の
平等、更に言論の自由、信教の自由など、204条が書かれており、
地方自治権等についても記されています。
当時これに類する民間の憲法草案が、日本各地の少なくとも
40数ヵ所で作られていたと聞きましたが、近代日本の黎明期に
生きた人々の、政治参加への強い意欲や、自国の未来にかけた熱い
願いに触れ、深い感銘を覚えたことでした。
長い鎖国を経た19世紀末の日本で、市井の人々の間に既に
育っていた民権意識を記録するものとして、世界でも珍しい文化
遺産ではないかと思います」と。
皇后という制約の強いお立場としては、かなり踏み込んだ、
しかし周到に配慮されたご発言だ。
そこに、現代の日本人への励ましと、
警鐘を聞き取る必要があるだろう。
近代黎明期の国民の間には確かにあった
「政治参加への強い意欲や、自国の未来にかけた熱い願い」
「既に育っていた民権意識」。
果たして平成末の日本人は、それらをしっかりと
持ち得ているだろうか。
厳しい逆境の中からスタートした「立憲的改憲」への胎動こそ、
皇后陛下が誇らしくご紹介下さった、「近代日本の黎明期に生きた
人々」の「未来にかけた熱い願い」を、現代に継承しようとする
壮大な企てに他ならない。
平和と民主主義を望む護憲派も、日本の自主独立を求める改憲派も、
自らの理念に誠実でありたいならば、立憲的改憲の旗の下に結集せよ!