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高森明勅
2017.11.30 22:00

秋篠宮殿下のおことば

11月30日は秋篠宮殿下の52歳のお誕生日。

国民の1人として心からお祝い申し上げ、
平素のご献身に深く感謝を捧げる。

今回のお誕生日に際しての記者会見は、
図らずも皇室が現在置かれている厳しい現実を、
如実に映し出す内容を多く含んだ。

殿下は記者会見の中で、
天皇陛下のご譲位が可能になった事に対し、
次のように仰っている。

「様々な意見がありましたけれども…
私たち家族はそのことについて一様に安堵しております」と。

先に、皇后陛下が

「計りしれぬ大きな安らぎを覚え、
これを可能にして下さった多くの方々に深く感謝しております」

と仰った事とまさに一致している。

特に「一様に」とのご表現に注目すべきだろう。

又、一部の者らが唱えた、
天皇と上皇のいわゆる“二重権威”への危惧については、
明確に以下のように言い切っておられる。

陛下は元々譲位するときには、それまでされていた
国事行為を始め、
全ての公的な活動を次の天皇に譲るという
気持ちを持っておられま
した。
そのことからも、
そういう二重権威という言葉が
適当であるとするならばですが、
心配もしくは危惧する
という向きがあったとしても、
そういうことはあり得ないと
私は、そ
れははっきりと言えます」と。

お立場に照らして、かなり強いご表現だ。

ここまでは、ことさら暗い内容にはなっていない。

むしろ、ご家族の「安堵」のお気持ちを、率直に表されていた。

ところが、陛下がご譲位された後、
皇位の直系継承から外れる形で、
ご自身が「皇嗣」となられる事については、
隠す事なく“戸惑い”
に近い感情を表明しておられる。

それが始動していく中で様々に試行錯誤していくことに
なるのでは
ないかなと思います」と。

加えて、ご公務の分担も困難な現実が浮かび上がる。

「(皇太子殿下のご即位後)恐らく皇太子殿下の方から私の方へ、
譲るというものがかなりあるのではないかと思います。
それらのものについては、できる限り私の方で引き受けたいと
思っております。
一方、
私が以前から行っているもの、
そしてまた、
団体の総裁であったり、
名誉総裁をしているものもあります。
実際に全体としてその物理的にどこまで可能なのか、
このこともよく考えていかないといけないなと思っています。
そして、もう1つは私が今しているものを今度は譲る先がない
という事情も
あります」と。

女性宮家が創設されるなら、
眞子内親王殿下が「譲る先」になられるはずだ。

しかし、その眞子殿下がご結婚と共に
国民の仲間入りをされたら、
秋篠宮殿下のご公務の
「譲る先」の問題だけでなく、
眞子殿下ご自身がこれまで
取り組んでこられたご公務の「譲る先」
は、どうなるか。

皇室の具体的な制度については、
憲法の制約によって、天皇陛下をはじめ皇族方が、
ご自身のお考えをそのまま表明できない、
という理不尽な現実がある。

「今の制度では、女性皇族が結婚すれば、
皇籍を離れることになります。
一方、
皇室の中で、女性の占める割合が非常に高いわけです。
皇族が少なくなると、いろいろ活動に支障が出るのではないか、
ということを耳にすることがあります。
しかし…やはり現状では、
その人数の中で、
できる範囲、できる仕事をしていくのが、
適当ではないかと思っております」

「議論が進んでいない、
確かに進んでいないのですけれども、
そのこともやはりある意味で政治との
関係にもなってくるわけです
ね。
…ですので、
今ここではちょっとお話をするのは
控えようと思います」と。

皇室典範の改正を巡り「議論が…確かに進んでいない」(!)。
しかし、皇室の将来は国民の自覚に委ねざるを得ない。

そのお気持ちが滲み出
ている。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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