憲法9条の戦力不保持規定。
自衛隊はこれを遵守して軍隊ではない。
その証拠にSROE(常備交戦規定)
すら持っていない。
これでは「個別的」自衛権も満足に行使できない。
それはこういう事だ。
「米国では奇襲を受けた場合、
大統領から現場の部隊指揮官へ直接命令が伝わるまで、
平時から発出されている常備ROE〔交戦規定〕…により、
部隊指揮官に権限を委任し、自衛権に基づく必要な武力行使
をさせるようにしています。
これは、他の多くの国でも採用されている方法です」
「〔煩雑な手続きを必要とする〕防衛出動が命じられるまで
武力行使の権限が一切ない自衛隊は、一方的に殲滅されます。
SROEすらないのは、緊急事態に備えるための組織が、緊急
事態での行動基準を示されていないということです。行動基準が
ない自衛隊が緊急事態に遭遇したときの選択肢は、2つしかあり
ません。
手をこまねいて何もしないか、超法規的措置(つまり違法)で
自衛権を行使するか。
いずれも軍事的・法的・人道的な観点から、許されないことです」
「〔緊急事態が突発した場合〕事態の発生を知った現場
(たとえば海上保安庁の巡視船)から海上保安庁、国土交通省、
さらに総理官邸に報告が入る。
防衛省へも通報されるでしょう。
そこで、まずは侵略事態であるかどうかが検討されます。
侵略事態だと認定されれば、『事態対処専門委員会』が対処
への基本的な方針を審議します。
これらは事前に決めておくのではなく、事態が発生してから
決めることになっています。
侵略が現に進行中というなかで処置を一から決めなければなら
ないのは、常識からして考えられないことですが…基本的な対処
方針が決まれれば、どんなに事態が緊迫していても、内閣総理大臣
はこれを『国家安全保障会議』というものに諮らなければなりません。
…ここで方針が認められたら、ようやく閣議にかけることができます。
この閣議で了承されれば、内閣総理大臣は防衛出動を防衛大臣に命じる
ことができるというわけです。
厳密に言えば、国会の承認も必要なのですが、
緊急時には事後承認でもよいとされています。
しかし発令されたからと言って、
即座に武力行使ができるわけではないのです。
防衛出動が発令されたあと、
さらに『自衛権に基づく武力の行使』
が命じられなければならないからです」
(中村秀樹氏『日本の軍事力』)
“お花畑”という比喩さえ控え目に見える。
これが、わが国の安全保障を巡る現実だ。