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高森明勅
2017.8.21 22:00

メディアと警察

メディアは国税庁に弱い。

という事は財務省に弱い。

ばかりでなく、警察にも弱い。

何故か。

すこぶる単純な話だ。
警察が極めて有力なネタ元だから。

新聞・テレビで社会部が流している報道の8割以上が、
警察からの情報と言われている。

殺人、傷害、強盗、放火等々。

毎日起こる事件の情報は、全て警察発だ。

警察が情報を出し渋ったら、たちまち番組や紙面作りに、
致命的な支障が生じる。

これでは頭が上がらなくなる。

つまり、メディアは「構造的」に警察に弱い。

国民はその事実を知っておくべきだ。
又、これは情けない話だが、
新聞社やテレビ局の社員の不祥事や犯罪を、
警察に頼んで揉み消して貰うという事が、
普通に行われているらしい。

私がずいぶん前に聞いた所では、
確か朝日新聞だったか、
上層部の1人に痴漢の常習者がいた。

本来なら運転手付きの高級車で送り迎えされる地位にありながら、
それを断って電車で通勤していた。

勿論、痴漢をする為。

もう殆ど病気に近い。

それで時折、警察のお世話になる。

それが公(おおやけ)になると、
上層部の人間だけに、
新聞社への非難を免れない。

仕方がないので、その度に揉み消して貰っていたようだ。

これでは頭が上がらなくて当たり前。

警察では、上層部の人間ではなくても、
新聞・テレビ局の社員が何らかの事件を起こした場合、
他とは違う対応をしているようだ(川端幹人氏)。

所轄署から先ず警視庁や道府県警本部の
広報課(!)
に連絡が入る。

そこから記者クラブに連絡を入れ、
クラブのキャップや本社の総務が所轄署に出向く。

それで、軽微な犯罪なら“お目こぼし”。

大麻や覚醒剤の使用、
女性への暴行などで逮捕されていても、
外部への発表を控えて貰うよう依頼する、という。

警視庁や道府県警本部では、
こうしたメディア企業の社員が起こした不祥事を、
全てリストにして手元に保管している。

普段は数ある保管資料の1つ。

しかし、ひとたび警察が大々的に報道して欲しくない
出来事などが起きると
、そのリストが無視できない
威力を発揮するとか。

もっと露骨なケースもある。

警察が持つ捜査権や逮捕権を直接、行使することも。

例えば、北海道警の裏金問題が北海道新聞に追及された時。

同新聞室蘭支社の元営業部次長を業務上横領容疑で逮捕し、
当時の菊地育夫社長まで事情聴取するという、非常に分かり易い
報復」を行った。

更に警察OBに新聞社を名誉毀損で訴えさせた。

これによって、他のメディアは恐れて批判を抑えるようになった。

北海道新聞も道警から抗議を受けていた記事について謝罪広告。

更に、
裏金問題取材班の中心で動いていた記者を
東京とロンドンに異動さ
せて、追及を打ち切った。

業界では北海道新聞の全面屈服と見られているようだ。

錯覚している向きもあるのではないか。

メディアは、国家権力に対しては基本的に「弱い」存在だ。

その事実を直視する必要がある。

国民が支えなければ、たちまち財務省や警察等々、
国家権力の「広報」
機関に堕落しかねない。

そっちの方が楽だし安全だ。

だがそうなると、
国民が正確で多様な情報に接する事ができなくなる。

自分で自由に自主的に判断しているつもりでも、
既にコントロールされた情報が前提であれば、
その判断もコントロール下のものでしかない。

財務省や警察等々も、人間の組織である以上、
強大な権力を持ちながらメディアの監視が弱まれば、
規律を守る緊張感が弛みかねない。

なのに、国民の一部には
安易にメディアバッシングに走る傾向すらある。

ただでさえ「弱い」メディアを、
もっと弱まらせてどうするのか。

なお誤解のないように付言する。

私は警察そのものを取り立てて悪者扱いするつもりは毛頭ない。

むしろ個々の警察官には感謝し、敬意を抱いている。

地元を歩いていて、
交番の前で立ち番をしている
お巡りさんを見かけると、
こちらから挨拶するように
心がけている位だ。

念のため。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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