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高森明勅
2017.8.14 23:00

誰が日本を守るのか

第2次世界大戦でわが国と同じ枢軸国側に属したイタリア
但し国内が分裂し、バドリオ政権は連合国側へ)。

そのイタリアが戦後、定めた憲法には、以下のような規定がある。

「祖国の防衛は市民の神聖な義務である」(52条)。

注意すべきは、これは政府が一方的に国民に押し付けた
“義務”
ではない、という事実だ。

現在のイタリア共和国憲法の制定過程を見れば明らか。

1946年6月2日の政体問題
(君主制を維持するか、
共和制に移行するか)を巡る
国民投票と共に行われた制憲議会選挙の結果を踏まえ、
1947年12月22日に同議会で、賛成453票、
反対82票の大差で可決された。

そこにはイタリア国民の意志が明確に反映されている。

わが国の憲法にも同様の規定を追加することに意味はあるか。

勿論、大きな意味を持つ
(言う迄もなく、
他にも関連条文が必要だが)。

何故なら、それは国民が自ら国防の責任を背負う覚悟を持ち、
又それを子孫にも伝えていこうとする、強い意志を示す事に
なるからだ。

何しろ国会で衆参両院の3分の2以上、
更に国民投票で過半数がそれを支持しなければ、
改正は実現しない。

その為には、国防に対する国民の意識が、
根本的に変わらなければ無理だ。

これまでのように、イザとなったらアメリカが助けてくれる、
自衛隊だけに任せておけば良い、という依存と甘えが残っている限り、
このような改正など夢の又夢。

憲法にこう書き込めば、それで国民が「しゃんとする」
と考えるのは、
原因と結果を取り違えている。

国民がしゃんとしない限り、こんな改正は不可能。

逆に、こんな規定が出来たら、
それは国民への“押し付け”と受け取るのも、違う。

憲法をただ上から“与えられる”ものと考える、
依存心理の裏返しだ。

自ら身を挺して、アメリカ又はその他の国を守ろうと
考える日本人が、何人いるか。

先ず皆無だろう。

それなのに、あらゆる犠牲を引き受けて、
日本を本気で守ろうとする他国が、
どこかに存在すると思うのか。

日本を守るのは日本人しかいない。

当たり前の話だ。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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